コーラを飲んだ途端、こーら参った(元ネタ:青酸コーラ無差別殺人事件より)

時は正月も終わろうかという日の事であった。

コインロッカーの傍の薄い緑色した公衆電話機の上に、

コーラの容器があった。

それを手に取った者が居た。

その手にした者とは新幹線でのアルバイトを終えた青年と思われる若者の様だ。

「お?これはラッキー!」

そしてそれを自宅に持ち帰って翌朝に居間で飲もうとする。

容器を開封し、コップに注いで一口ほど飲んだ途端、

異変が起った。このコーラがいつもと違って味がおかしい!

その炭酸の中に何やら不快な味を感じたのだ。

そこで台所で吐き出して水道水で口をすすいだものの、段々と

意識が無くなって行こうとする。

「どうしたの高志?」

この青年の母親と思われる熟女が、台所で倒れている高志を見て

大いに悲鳴を上げた。この青年の父親と弟と妹と思われる

男女三人がやって来た。

「どうした?た、高志っ!?」

「あんちゃんッ!?」

「お兄ちゃんっ!?」

「明代ッ!?救急車だッ!?電話しろッ!早くッ!!」

明代と呼ばれた高志の妹である女の子はすぐ消防に電話した。

そして数分で到着した救急車で病院へ救急搬送された。

だが病院での必死の処置も虚しく、高志という青年は亡くなった。


警察が遺体と飲み遺しを調べた所によると

それから青酸化合物と思われる劇薬の反応が検出された。

捜査陣がそれに関して不審を感じている所へ、

追い討ちをかける様に数多くの報せが届いた。

上は建設現場の作業員から下は小学生男児に到るまで

多くの者が毒殺死体で発見されたというのだ。

しかも共通点とは性別が男性であるのだ。

その上、どの死因も青酸化合物らしきものを含んだ

清涼飲料を生前に飲んだ事が理由という。

テレビや新聞でもこれを連日、取り上げ加熱した報道ぶりを

競い合っている。そのテレビ画面を薄暗い一室でせせら笑う人影があった。

「くくく。世の中の男どもはどれも馬鹿なヤツよ?

我らフェミニストからの死のプレゼントと考えもせずにな?」

そしてテレビのスイッチを切ると椅子から立ち上がると、

「やはり愚かな男はこの世から淘汰すべきだ。

そうすれば世の女性にとってこの世は素敵な楽園になるだろう?」

そう呟くと、部屋を後にして行った。


やがてこのフェミニストの嘲りを他所に、

この青酸化合物の入った清涼飲料による半ば大虐殺に等しい

事件は警察の必死の捜査にも拘らず、その後これといった

気配すら掴む事も叶わずやがて迷宮入りへと追いやられた。


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