第14話 狩猟

その年老いた猟師は、猟期が始まるのを待って狩猟にでかけた。

長年、狩猟をしていても、この猟期の始まりは緊張する。

猟場には、独特の匂いがある。

猟師は、胸いっぱいに空気を吸い込むと大きく息を吐き出した。

猟師は、猟犬の追い立てる獲物を狙って引き金を引いた。

“パーン”

外してしまった。

胸の中に溜めていたとでもいうように、ため息ともつかぬ息を吐き出した。


翌日も、その年老いた猟師は、猟にでかけた。

猟師は、猟犬の追い立てる獲物を狙って引き金を引いた。

“パーン”

また、外した。


それから猟期が終わるまで、猟師は、猟を休んだ。


猟期の最後の日に、猟師は、猟場にでかけた。

猟犬は連れていなかった。

猟師は、猟銃の引き金を引いた。

“パーン”


それ以降、その銃が火を吹くことはなかった。


<了>

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散文の詞 渡敷 怜 @Rei_Watashiki

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