第13話 トントン

台所から聞こえる“トントン”という音。

いつものことだ。

この音で、起こされるのだ。

なんだか、喉の奥の方で、つばが湧いてくるような、そんな気分になってくる。



その日は、突然やってきた。

交通事故だった。

夫婦が同時に死ぬことはない。

失意の中で、寂しさの中で、日々を過ごしていると、例の“トントン”という音。

そこには、愛する妻がいた。

妻は、ふと振り向くと、小さな専用のお茶碗に、てんこ盛りに盛り付け、わたしの遺影の前に置いて手を合わせた。


<了>

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