第12話 愛の肝

オー氏は、今日、退院して自宅に帰ってきた。

オー氏の娘は実家で、それを迎えながら、違和感を感じていた。

なにか違うような気がするのである。

オー氏は、かなり威厳を持って我の強い感じだったのが、優しい感じの笑顔なのである。

そう言えば、笑ったところもほとんど見たことはない父なのに、今は、笑顔なのだ。



数日後に、オー氏の娘が実家を訪ねた。

家庭菜園にいた母に声をかけようとして、その側にいる父を見つけてびっくりした。

土で汚れるなんて嫌いなはずだったはずなのだが。

「なんだか、生体肝移植の手術してから変わった?」

母に声をかけると、

「ええ、なんだか、私みたいになっちゃったわ。私の臓器のせいで私みたいになったみたい」

立ち上がったオー氏は、腹部をなでながら、こちらを見ていた。


<了>

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