第6話 たのしみ

彼は、朝、だんだん明るくなってくる中、起こしに行くことが「たのしみ」のひとつだった。

彼は、ハグされることが「たのしみ」のひとつだった。

彼は、ウォーキングが「たのしみ」のひとつだった。

彼は、食事が「たのしみ」のひとつだった。

彼には、「たのしみ」にしているおもちゃがあった。

日々の繰り返しの中には、「たのしみ」があふれていた。

その日までは。



「ううう。お母さん…」

「うん、もう歳だから、しょうがないのよ。そっと見送ってあげましょうね」

「ううう。ポチ…」


<了>

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