第5話 廃鉄

オー氏は、廃線巡りが趣味である。

今日も、真夏の炎天下、線路に降りて、陽炎が出ているところを、パチパチと撮っていた。

廃線とはいえ、線路に降りてはいけないであろうことは、オー氏にもわかっていたが、どうにも我慢できない。

廃線を見ている高揚感と、暑さもあいまって、オー氏には、向こうから走ってくる蒸気機関車が見えていた。

きっとこんな感じで走っていたのだろう。

音まで聞こえる気がする。

オー氏は、陽炎の上を走る蒸気機関車を、ファインダー越しに見ていた。



夏休みの目玉かどうかは、知らないが、整備していた蒸気機関車をこの炎天下、極秘裏に試験走行させるなんて、本当に上層部には迷惑する。

とはいえ、蒸気機関車の運転の練習にもなるし、廃線になってるのだから、気を使わずに試運転できるのだけはよかった。

運転士は、熱い釜に炭を放り込み、前方をみると、線路の上に人影がボーーっと、見えたきがした。

この暑さで、幻まで見えるのかと、蒸気を出して警笛を鳴らすと、スピードをあげた。



<了>



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