第3話 いるのは、わかってるぞ

彼は、自分の家に帰って扉を開ける前に必ず、「いるのは、わかってるぞ」と言う。

以前、帰ってきた自分の部屋で泥棒と鉢合わせしたことがあると、知り合いに聞いてからの習慣である。


出張に行ったホテルでも同じことで、「いるのは、わかってるぞ」と言って、鍵を開けようとしたら、がさっと音がした。

鍵を開けようとした手が止まった。

確かに音がしたような気がする。

部屋を間違えたかと思って、キーの付いたプレートを確認したが、部屋の番号は合っている。

彼は、ゴクリと生唾を飲み込むと、もう一度、「いるのは、わかってるぞ」と言った。

確かにガサゴソ音がしているようだ。

彼は、思い切ってドアを開けてみた。



ドン、ドン、ドン

「おい!開けろ!いるのはわかってるんだぞ!」

ハッと、我に返った彼は、また、ライフルに弾を込めると、通行人に向かって撃ち始めた。



<了>




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