第12話 日本茶店「サツキ」

ここではその名の通り緑茶を中心とした日本茶を扱っている。

このお店のお茶を紹介するついでに日本茶について解説しよう。

外国人の私が日本人に日本茶を解説するのは変な話であるが。


海外で飲まれているお茶の多くは紅茶であるが、

日本で飲まれているお茶の多くは緑茶と呼ばれるものである。

紅茶とは違い茶葉を発酵させずに使用する。


抹茶、玉露、煎茶、番茶、茎茶、ほうじ茶、玄米茶、等々いろいろな種類がある。

さらに麦茶、そば茶、豆茶など緑茶以外のお茶も広く飲まれている。

日本三大銘茶と呼ばれるものがあり、

色は静岡、香りは宇治、味は狭山がよいとされている。


日本茶はまず、葉を臼などで粉にする抹茶と葉をそのまま乾燥させて蒸す煎茶に分かれる。

煎茶には調理によって多数の種類に分かれる。


日本茶といえば一番おいしいとされている玉露を最初にまず語らねばなるまい。

玉露は収穫前に遮光を行い、渋みを抜いて甘みを出す。

農家によって違うが一般的には二十日前後。

この遮光の仕方は各農家で違い、そこが腕の見せ所にもなっている。


もう少し短くおよそ一週間ほど遮光したものはかぶせ茶といわれる。

かぶせ茶は玉露よりも安価なため、玉露と似た味で安く売りたい農家が玉露に代わって作ることが多い。


「玉露って甘みだけじゃなくって旨味というか、なんともいえない不思議な味がするのよね。

 場所にもよるけど私はかぶせ茶とかほうじ茶のほうが好きだわ。」


玉露は一般的に他のお茶よりも値段が高い上、味も独特である。

単純にどんな味かは解説できないため興味のある方が飲めばいいだろうとアニーは考えている。


遮光せずに収穫した葉をそのまま乾燥させて使うものが煎茶である。

基本的にその年の最初に収穫する一番茶の柔らかい茶葉を使ったものをさす。

場所によっては二番茶も煎茶と分類する茶園もある。

後で紹介する番茶よりも香りがよい。

玉露とは違い渋みがあるのが特徴だ。


我々がよく飲むお茶は二番茶以降の固い茶葉、もしくは製茶する際にはじかれた規格外の茶葉を使って作る番茶であろう。

渋みはあるものの、さっぱりしていて飲みやすい。

各家庭にある普段使いのお茶である。


これらが煎茶の基本的な部類である。

しかし、我々が身近に目にするものがもう少しあるので紹介しよう。


茎茶。

棒茶ともいわれ、葉柄、茎、枝が多く混ぜられたもの。

お茶を飲む人の中には「雁ヶ音茶」というお茶の名前を聞いた方もいるだろう。

これは上質な煎茶の茎を集めて作られたお茶である。

とてもさわやかで癖があまりなく飲み心地がいい。

アニーはこれが一番お気に入りである。


ほうじ茶。

我々がよく目にするほうじ茶は今まで紹介した煎茶や茎茶、番茶等の葉をコーヒーのように焙煎して入れたお茶のことである。

焙煎した分香ばしくなり独特の味と香りとなる。

寒い冬場に特に人気が広がる。

牛乳で割ったほうじ茶ラテも近年人気を誇っている。


玄米茶

煎茶や番茶に炒った玄米を混ぜ合わせたお茶。

ほうじ茶とはまた違う香ばしい香りがする。

ただ、こちらのほうがあっさりした味になっている。


「煎茶シリーズだけでもかなりの種類があるじゃない。」


「まだまだ。

 煎茶以外の他にも日本茶はたくさんある。」


麦茶。

大麦を炒って煎じたものですっきりとした味わいのあるお茶。

茶葉を使っていないのでカフェインがほとんどないことが最大の特徴である。


そば茶。

ソバの実を炒って煎じたもの。

独特の香りでまろやかな味である。

こちらもカフェインレスである。


黒豆茶。

黒豆を炒って煎じたもの。

こちらもカフェインレス。


「えー。

 カフェインないの……。」


がっかりするアニー。


「カフェインが嫌な人もいるんだ。

 世間は俺たちみたいな仕事中毒なやつらだけじゃない。」


カフェイン中毒者の二人は置いておいて、

店内の様子を見てみよう。


店内にはお茶のペットボトル、袋詰めにされたお茶、そして丸い筒状の缶に入れられたお茶が置かれている。

他にも抹茶が混ぜ込まれた焼き菓子、ゼリーやアイスクリームが売られている。


「いい景色。

 ずっと眺めていたいわ。」


「アニーはこういうの好きなのか。」


「もちろんよ。

 アメリカに住んでいた時からずっとこの緑のお茶に憧れていたわ。」


「俺は紅茶も好きだけどな。

 やっぱり知らない国の商品が気になるのはわかる気がする。」


ここでのウエルカムサービスはもちろん緑茶である。

夏場は水出しの緑茶。

冬場は温かいほうじ茶だ。

しかも。


「え!?」


「はは。

 驚いたか。」


紙コップに飲料を淹れられ渡される他の飲料店とは違い、なんと湯飲みに次いで持ってきてくれるのだ。


「信じられない。

 ……すごいわ。」


「俺も初めて来たときは驚いたけどな。」


湯飲みはもちろんレンタルなので飲み終わったら店員へ必ず返そう。


ここでも喫茶店をやっており、店内のお茶と和のスイーツが楽しめる。

普通のお茶だけではなく、抹茶ラテや玄米ラテなどの甘く仕上げられた飲み物もある。


抹茶を頼めば湯飲みと共に、お茶の入った小さなクッキーや羊羹がついてくる。

そんな中日本人の陸がアニーに勧めるのがこれ。


「何これ。

 抹茶ゼリーに抹茶アイス、抹茶クリーム、それにアンコまで。

 しかも抹茶団子まで刺さってるし。」


長いパフェの器に抹茶のお菓子をこれでもかと詰め込んだ抹茶パフェだ。

それを緑茶に砂糖を入れた飲み物、グリーンティーと一緒に食べれば夏場の究極の贅沢である。


アニーは食べ終わった後終始機嫌がよかった。

一体どんな味なのか。

気になる方は魔界へどうぞ。

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