第8話 主婦の強い味方 キッチン用品店「コシーナ」
この店に入れば嫌でも目に付く多彩な色のバリエーション。
カラフルな食器をつい余分に買い物かごの中に入れたくなる。
「コシーナ」とはスペイン語で台所を意味する。
ここは魔界の主婦御用達のキッチン用品店である。
お皿、マグカップ、ちゃわんなどの食器をはじめ、電気ケトル、お弁当箱、エプロン、調味料入れ、まな板、包丁など日常生活で必要なものが一通りそろっている。
「外食もいいけど、やっぱり自炊でお金を節約したいわよね。」
「外食ばっかりしてると栄養が偏るからな。」
「陸はいっつも出前頼んでるじゃない。
糖分、塩分、脂肪って感じのやつ。」
「アニーは本当にアメリカ人か?
日本になじみすぎだろ。」
「陸が家で自炊あんまりやらないって聞いてびっくりしたわ。
せっかく日本食教えてくれたのに。
もったいないわね。」
「家内が作ってるからな。
それに日本食を教えたのは仕事だからだよ。
いつもはそんなめんどくさいことしねえし。」
アニーはカクヨムフーズに就職してから陸に和食を教えてもらった。
欧米の食事に慣れ親しんだアニー。
最初はご飯とみそ汁を用意することだけでも大変だったが、今では毎日ご飯とみそ汁に加え、焼き魚や煮魚、野菜の煮物や炒め物といった和食を毎日作れるようになった。
そんなアニーがキッチン用品を買い足すために世話になっているのがこのお店である。
ここで最近話題の調理器具を紹介しよう。
まずはヨーグルトメーカー。
機械に小さめの牛乳パックをセットしてしばらく放置しておくとヨーグルトができるというもの。
牛乳を容器に移して、タネ菌もしくはヨーグルトそのものを牛乳と混ぜて牛乳パックに戻す。
成功すれば市販のヨーグルトよりも安くてうまいヨーグルトができる。
つぎはホットサンドメーカー。
この機会を使えば冷たいサンドイッチではなく、焼きたてのカリカリサンドイッチが食べられるのだ。
一度に食パン2枚を同時に調理できる優れものだ。
ハムチーズにジャム。
ピーナッツバターや余ったカレーなどを入れてもおいしい。
さらに別売りになっている専用プレートを購入すれば、焼きおにぎり、たい焼き、お好み焼きといったものも作れてしまう。
一家に一台あればとても便利である。
これも便利である万能茶こし付きハンディークーラー。
耐熱ガラスになっており、ホットなお茶でもクールなお茶でもOK。
カラフルなキャップもついていておしゃれである。
一番優れている所はハンディークーラーに深々と突き刺さる形をした茶こしだ。
紅茶でも緑茶でも簡単に入れられることができ、しかも深い形をしているため非常に洗いやすい。
容器にはメモリもついており、別売りになっている計量ティースプーンと組み合わせて使えば、秤いらずで手軽にお茶が楽しめる。
アニーマーケットのオーナーであるアニーも愛用している商品だ。
お茶を入れるのであればこちらもおすすめである。
それは高性能の電気ケトル。
水が沸騰したらカチっとスイッチが切れる音がなり勝手に自動停止する。
鍋で水を沸騰させようとした場合、常に火の元を見なければならない。
最悪の場合は火事の原因にもなったりするため、水を入れてスイッチを入れるだけでできるこの便利さにはかなわない。
しかも電気ケトルのほうが沸騰する速度が断然早い。
これは買わない手はない。
よくあるポットを足で蹴って火傷するという事故も転倒防止構造になっているこのケトルであれば安心だ。
蓋もカッチリと閉まる仕組みになっており、上部についているボタンを押さないとお湯が出てこない仕組みになっているのでさらに安心である。
もちろんアニーもお茶やコーヒーを入れる時に愛用している。
最後にとっておきのものがある。
それは取っての取れるフライパンだ。
料理の後の皿洗いが面倒。
というのは主婦たちの大きな悩みの一つ。
調理したものをそのままお皿として使いたい。
そんなものぐさな願いをかなえる夢の商品だ。
取っ手を外す時は取っ手の先についているハンドルをドアノブの用に回せば簡単に取れる。
着ける時も外した時と逆の方向にハンドルを回して固定するだけ。
同シリーズで鍋も出ており、取っ手が共有可能。
毎日料理に追われる主婦たちの強い味方だ。
そもそも魔界に住むモンスターたちは人間が当たり前のように使っているキッチン用品でも初めて見るという者が多い。
そこで何も知らないモンスター達にもキッチン用品が使えるように使い方を教える場が必要である。
そこで有効なのが実演販売だ。
実際にピーラーで野菜の皮を剥いたり、まな板を敷いて包丁で野菜を切っている所を見せたりして使い方を教えながら販売するのだ。
料理に慣れた人間にはワッフルプレートや全自動のタコ焼き機等の便利だが使い方が複雑な商品を説明しながら実演販売すればよい。
ワッフルの甘い匂いやたこ焼きのソースの焦げた香ばしい匂いは人間、特に小さい子どもたちが大好きな匂いである。家族連れを誘う強力な武器だ。
実演販売の長所は商品のアピールをするだけでなく、実演で作ったものを客に試食させたり販売したりできる点である。
人が作っているものを自分も真似したくなる人間の習性をうまくついている。
商品の使い方を見せることで視覚を。
調理する音を聞かせて聴覚を。
作ったものを試食させて味覚を。
匂いをかがせて嗅覚を。
調理機材を触らせて触角を。
人間が持つ五感に商品のイメージを刷り込ませる。
ついつい買ってしまいそうな衝動に捕らわれそうである。
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