第154話 自分達のペースで
(僕と高嶺さんは映画を観終わって公園まできていた。ベンチに座って、二人でいるとなんだか恋人みたいでこそばゆい……いや、僕と高嶺さんは恋人なんだけどね!)
「映画、面白かったし感動したね」
「はい。二人が無事に結ばれてくれて本当に良かったです」
「高嶺さんがあの映画をオススメしてくれたおかげだよ。ありがとう」
(高嶺さんがオススメしてくれた映画は本当に感動した。全てを敵に回しても愛する人を選ぶ主人公には男の僕でも惚れてしまうくらいだった)
「い、いえいえ。ちょうどCMでも流れていて思井くんと観たいって思っていたので……観れて嬉しいです」
(高嶺さんが上目遣いで言ってくれてる。可愛い……。
高嶺さんが僕と映画を観たいって理由は多分、デートがしたかったからだけじゃないと思うんだよね――。
僕と高嶺さんは改めて恋人になってどうやって接していたか分からなくなっていたと思う。僕は変に意識して学校でもギクシャクしてたし……。だから、高嶺さんはそんな僕を気遣って映画デートに誘ってくれたんだと……思ってる。観る内容も恋愛ものだったし……恋人ってどうするのかの参考にしようとしてたんじゃないかな?
僕も高嶺さんともっとちゃんと恋人らしくなりたいって思ったし意気込んで観たけど……正直、参考には全然ならなかった……。
だって、映画の中ではいっぱい抱きしめ合ってたりキスし合ってたんだもん!
流石に、恥ずかしくてまだ出来ないよ!)
「……思井くん、私ちゃんと彼女出来てるんでしょうか?」
「高嶺さん……」
「実は、映画を観たかったのは思井くんと一緒にという気持ちもあったんですけど……私、変に意識しないで彼女をするにはどうすればいいのか参考にしたかったんです。騙しちゃうような形になってすいません……」
「そんな……謝る必要なんてないよ。僕だって高嶺さんと一緒で変に意識して……学校でもギクシャクしちゃってたし……僕の方こそ謝らないとだよ」
「……ふふ、やっぱり、思井くんもそうだったんですね」
「うん……。改めてこ、恋人になるとどう接したらいいのか分からなくなっちゃって……初めての時だって、気持ちで行動してたようなものだったから……」
「一緒です。私も改めてとなると何が正解で……彼女なのか分からなくなっちゃって……映画を参考にしようと思ったんです。思井くんは参考になりましたか?」
「ううん、高嶺さんには申し訳ないんだけどあんまり参考にはならなかったよ。高嶺さんは?」
「……私もです。恋人は難しいってことが改めて分かったくらいです。参考にはなりませんでした……」
「そっか。
……うん、でも、僕はそれで良いと思うな」
「思井くん……」
「映画の二人は二人のペースで。他の恋人達もそれぞれのペースで。僕達は僕達のペースで恋人っぽくやっていけば良いと僕は思うよ」
「私達のペース……」
「うん。僕も高嶺さんも誰かの真似なんてしなくて良いんだよ。僕達は僕達のまんまで良いんだ。だから――」
(今はまだ、高嶺さんと抱き合ったりキスしたりは恥ずかしくて出来そうにない。けど、これくらいは……僕から手を差し出すくらいはしたい!)
「これからも、高嶺さんのままで彼女でいてください」
「……っ、思井くん」
「今はこれくらいしか出来ないけど……僕も僕のペースで恋人らしくなれるように頑張るからさ……高嶺さんも――」
「……っ、はい。私も私のペースで」
(高嶺さんの手は相変わらず柔らかくてすべすべしていて……そんな高嶺さんの手を僕は自分から繋ごうと思ったなんて……手汗とか大丈夫かな!?)
「こ、これから、どうしよっか?」
「もう少し一緒にいたいです。だから、歩きませんか?」
「う、うん。そうだね」
「では、行きましょう!」
「うん!」
(正直、高嶺さんとならどんな恋人になったって幸せだと思う。だって、今もスッゴく幸せだから。だから、僕は高嶺さんを少しでも幸せにしたいし、高嶺さんと一緒にもっと幸せでいたい。この手を離さないように……僕のことを好きでいてくれる高嶺さんを離さないように……頑張ろう!)
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