第153話 やっぱり、兄が好き―珠side―

「バス代、ありがとうございました」


「いえいえ。その、一人で後をつけるより二人でつけれて楽しかったのでそのお礼なのです。一人で帰れますか?」


「はい。あの、一つ提案なんですけど……今日、会ったことは内緒にしときませんか? お兄ちゃんにバレたら怒られそうな気がするので……」


「そう、ですね。私も氷華に嫌われたくはないのです」


「またいつか、会えば仲良くしてくださいね。水華お姉ちゃん!」


「……っ、はいなのです。可愛い珠ちゃんと仲良くすると心に誓うのです!」


「それじゃあ、さようなら」


「バイバイなのです」


(さっきは高嶺お姉さんとは全然別人だって思ったけど……水華お姉ちゃんも良い人だった! また、会えた時は仲良く出来そうだし……次に会う時が楽しみだなぁ。ちゃんと、初対面同士で振る舞わなきゃ!

 お兄ちゃんとお母さんももう少ししたら帰ってくるだろうし……それまでに、ちゃんと大人しくしてたようにしないと!)



「ただいま」


「お帰り、お兄ちゃん!」


「珠。良い子にしてた?」


「もっちろん! バッチグーだよ!」


(嘘だけどね)


「お兄ちゃんは楽しかった?」


「う、うん」


(手を繋いだの思い出したのかな? お兄ちゃん赤くなっちゃった)


「そっか。良かったね!」


「うん!

 じゃあ、僕はジャージに着替えてくるから」


「分かった。後でお話聞かせてね」


(……これからは、お兄ちゃんにかまってもらえる時間って減っていくんだろうな。でも、それって仕方ないことなんだよね……。悲しいし寂しいよ……でも、我慢しないと。あんな楽しそうな二人を見ちゃったら……もう私が入れる余地なんて――)


「あ、そうだ。珠にお土産があるよ」


「えっ!?」


「まぁ、お土産って言ってもクッキーなんだけどね。高嶺さんと寄ったカフェで美味しかったから買ってきた――って、珠。苦しいんだけど……」


(……あぁ、やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんのまんまだ。私が大好きなお兄ちゃんのまんま――)


「お兄ちゃん……」


「ん?」


「ありがとう!」


「うん。じゃ、そろそろ、離してね」


「えーー、もうちょっと良いじゃん!」


「今日はどうしたの? いつも以上に力、強い気がするんだけど……」


「お兄ちゃんが高嶺お姉さんとデートして寂しかったの。だから、もうちょっとだけこうさせて!」


「……ハイハイ」


「頭、撫でて!」


「……これでいいの?」


「……うん。

 満足したからもう離れるね」


「クッキー食べる?」


「うん。食べながら、お兄ちゃんのお話聞きたいな」


「うっ……そんなに話せる内容か分からないんだけど……」


「いいの。お兄ちゃんの顔見れば楽しかったことくらい分かるんだから。そのまんま話してくれたらいいよ」


「緊張するけど……分かったよ」


「じゃ、よろしくね!」


(きっと、この先お兄ちゃんとずっと一緒にはいられなくなるかもしれない。でも、今はまだお兄ちゃんがいてくれる。それまでは、妹ポジションを使ってお兄ちゃんと一緒にいるんだ! そう簡単に高嶺お姉さんばっかりにお兄ちゃんを独り占めなんてさせてあげない! だから、覚悟しててね。高嶺お姉さん!)

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