第150話 VS不審者さん―珠side―
(バスに乗ってる間に何も起こらなくて良かったよ……。でも、気は抜けない。次はここ――映画館! 映画館は基本的に少し暗いから気を引き締めないと!
……その前にチケット買わないといけないんだった。どうしよう。お兄ちゃん達、恋愛映画見るって言ってたけど……私一人で買えるかな?)
「う~ん……――」
『小学生一枚!』
『すいません。こちら、お一人様では見れないんです。親御さんはいますか?』
「――こう言われちゃったらお仕舞いだしなぁ……」
(……っ、そうしている内にお兄ちゃん達がチケット売り場に並び出して――あの不審者さんも同じ列に並んでる……!)
「……そうだ!」
「すいません。大人一枚――」
「――あと、子ども一枚!」
「……はい!?」
(不審者さんと同じで買えばいいんだ。幸い、私と不審者さんはおんなじような格好してるんだし……怪しいって思われるだろうけど二人組なんだからいいように間違えられるでしょ。私って天才!
不審者さんだって驚いて口をぽかーんって開けてるし……奇襲も成功だ!)
「すいません、この子間違えているようなのですが……」
「もぉ~何言ってるのお姉ちゃん。私達、大の仲良し姉妹じゃない!」
(不審者さんは声で女の人だって分かった。ってことで、姉妹で突き通す。アワアワしてる不審者さんには何もさせない。お金を払わせるだけ)
「ごめんなさい。お姉ちゃんちょっとイタズラが好きで……ほら、こーいう格好も――」
「は、はぁ……」
「じゃ、大人一枚と子ども一枚でお願いします!」
「せ、席はどうしますか?」
「後ろの方で空いてる――あ、ここでお願いします。良かったね、お姉ちゃん。一番後ろの席が空いてて。じゃ、お金払って」
(この不審者さん思ったよりも弱そう……? 大人しく、二人分のお金払ってくれているし――)
「ありがとうございましたー」
(いつの間にかお兄ちゃん達を見失っちゃった……ま、それは、心配ないけど。後で絶対に見つけれるんだし。
それよりも今は――)
「ねぇ――っ!?」
「あの――っ!?」
(……っ、かぶせてくるとかいよいよ本領発揮? 私だって負けないよ!)
「何、不審者さん? っというか、誰?」
「あ、あなただって誰なのですか? 私に無駄な出費をさせて……って、誰が不審者さんですか!?」
「自分の格好を見て分からないの? お兄ちゃん達の後をつけたりなんかして……不審者さんなんでしょ?」
「こ、この格好はただの変装なのです。不審者ではないのです」
「私は騙されないよ! お兄ちゃん達のためならここで大きな声出してもいいんだから」
「お、お兄ちゃん達って誰のことを言っているのですか? あなたのお兄ちゃん等知りません。私は妹達のために後をつけていたのです!」
「私だって不審者さんの妹さんなんて知らないよ。私はお兄ちゃんのために――」
「……っ!? か、隠れるのです!」
「な、何を!」
「だ、黙るのです!」
「ムグググ――」
(この人やっぱり凄い人!? 一瞬で口を塞いで売店の中に紛れて――って、お兄ちゃんと高嶺お姉さん!?
どこに行ってたのか分からないけど戻ってきたんだ……。危なかった。この人が売店の中に隠れてくれないともう少しで見つかるところだった……)
「ご、ごめんなさいなのです」
「……ふん」
(落ち込んだように謝ってきても信用はしない。でも、今は一緒にいないと見つかっちゃう……。もう、お兄ちゃんももう少しどこか行ってくれていたら……不審者さんを倒せたかもしれないのに……)
「……はぁ、お兄ちゃん――えっ!?」
「……はぁ、氷華ぁ……――えっ!?」
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