第147話 おんぶ―高嶺さんside―

(花火も終了して、そろそろ帰ろうかということになった。本当はもう少し一緒にいたかったけど……明日から学校も始まるしそうはいきませんよね。

 私は歩こうとして足に痛みが生じた。情けない声をあげて、足を見る。すると、指の間が赤くなっていた。

 あぁ、さっき走ったからですね。

 思井くんが心配して歩けそうか訊いてくれた。私は大丈夫と答えた。

 少し痛むけど……歩けないほどではありません。さぁ、帰りましょう――とした時、思井くんは私に背を向けてしゃがんだ。


 それが、何を意味しているかは言われなくても流石に理解した。理解はしたけど……驚きを隠すことは出来なかった。

 驚いている私に思井くんは案の定、おんぶして帰ると言ってくれた。

 その申し出はとても嬉しかった。今じゃなかったら……。

 今は困るんです……。その、重たい……かもしれませんし、何より……し、下着を着けていないんです!


 私は歩けるから大丈夫だと断りを入れた。

 でも、思井くんが私の足をこれ以上傷つけたくないと……。

 ……っ、そんなこと言われると断れなくなっちゃいます……!

 私は思井くんの優しさをむげに出来なくて甘えさせてもらうことにした。


 うぅ……ここまで隠せてきたのに最後にとんだ落とし穴が待っていたなんて。お願いします、思井くん。どうか、気づかないでください……!

 私は思井くんが気づかないことを祈りながら思井くんの背中に身体を預けた。

 気づかないでください……気づかないでくださ――あ、でも、思井くんの背中、大きくて温かい……安心、してられなんかいられません! 思井くんの意識をこちらに向けないと!

 私は思井くんに重たくないか訊ねた。すると、全然重たくないという答えが返ってきた。

 私は思井くんにそう言ってもらえたこととおそらく下着を着けていないことに気づいていない様子でホッとした。そして、どうせ私くらいのお胸なら気づかれないのだと思い、この状況を堪能しようと決めた。


 思井くんに体重をかけてぎゅっと抱きついた。

 あぁ、幸福です!

 私が幸福に浸っているとあることに気がついた。思井くんが耳まで真っ赤にしていたのだ。私がどうしたのかを訊くとなんでもないと答えた。

 私は緊張しているのだと思いそんな思井くんが愛しく感じた。


 私を落とさないようにゆっくりと動き始めてくれた思井くん。そんな思井くんが苦しくならないように首に腕を回して私は抱きついた。

 耳に入ってくる思井くんの鼓動の音を聞きながら静かに目を閉じた。

 この時間が永遠に続けばいいのに……!

 思井くんが私の家まで向かってくる中、私は強く思った)

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