第144話 好き―高嶺さんside―
(私が訊くと思井くんは驚いたようにして私の名前を呼んできた。だけど、私は少しの間だけ何も答えなかった。
突然、意味の分からないことを言って……困らせてしまって、すいません。だけど、思井くんに考えてほしいんです。私がどうしてほしいのか……あなたとどうなりたいのかを……!
ただ黙ったままじっと思井くんを見つめた。そして、そんな私を思井くんもじっと見つめ返してきてくれた。
私の中にはもう何もなかった。花火の色も音も届いてこない。どうしてほしいかも消えた。思井くんが好きという気持ちだけが私を埋め尽くした。
そして、口にしていた。思井くんに向かって呟くように好きと……言っていた。
口から小さく声を漏らしながら目を大きく見開いた思井くん。そんな思井くんに私は好きだと伝え続けた。
みるみるうちに顔を真っ赤に染めていく思井くん。
恥ずかしい……。
私もカアッと熱くなっていくのが分かった。でも、一度溢れた想いを止めることは出来なかった。
まるで、石のように固まった思井くんに私は何か言ってくださいと言った。私だけ好き好きと伝えて何も言ってくれないのはあまりにも恥ずかしかったから。
……それに、黙ったままでいられると確認するために何をしでかすか分かりません……!
すると、思井くんはいきなり過ぎて驚いたと言ってきた。
……やっぱり、今までの私の表現は伝わってなかったんですね……。今まで、結構な回数の好き表現したと思うんですけど……。
私は落ち込みながらいきなりなのはお互い様だと言った。
私だって思井くんと話したいと思っていたらいきなり告白されたんです! うん、お互い様です!
だから、私は次は思井くんが返事を聞かせてくださいと言った。この言い方は少しズルいとも考えた。
けど、好き同士なんですし……問題ないですよね!
だけど、思井くんは答えを出せなかった。
ど、どど、どうしてですか!? 私のこと、嫌いになったんですか!?
私は焦る内心を押し殺し、あくまでも冷静にどうしてかを……私のことが嫌いになったのかを訊ねた。
これで、うんと言われたら私立ち直れません……。
けど、思井くんは首を横に振った。そして、自分の気持ちを言ってくれた。夏休み中、ずっと私のことを考えてくれていたと。私と会える度に嬉しくて、今日だって本当に楽しみだったと。それくらい、私のことが好きだと!
聞いていて、私は爆発しそうになった。
思井くんと同じ気持ちだったこと……そして、思井くんも好きでいてくれたことが堪らなく嬉しかった。
でも、思井くんの気持ちはそこで終わらなかった。短い期間しか友達でいないのに、私と恋人になってまた私を悲しませてしまうことが怖いと告げた)
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