第138話 妹に嫉妬

(花火の時間までもう少しあるとのことで再び屋台を見ながら過ごしていた私と思井くん。すると、思井くんに向かって駆けてくる小さな影。その影は思井くんに正面から抱きついた。正体は妹の珠ちゃんだった。赤色の浴衣がよく似合う元気な珠ちゃんはどうやらお金がなくなったようで思井くんにせがみにきたらしい。

 思井くんからお金を受け取った珠ちゃんはヒシッともう一度思井くんに力強く抱きついていた。

 ず、ズルいです……!


 珠ちゃんは私に気づいたようで可愛らしい笑顔で挨拶してきた。私も一応は挨拶を返したけど、内心は珠ちゃんに妬いてばかりだった。

 う、羨ましい……私だって思井くんに抱きついてみたい……! やっぱり、早急に彼女にしてもらわないと……!

 私は気づかない内にうじうじしていたらしい。そこを、珠ちゃんに突かれた。

 私が焦っていると珠ちゃんは何かを察したように笑いながら、私も思井くんに抱きつきたいと思っていること言い当てた。

 私は頬が熱くなるのを感じた。そんな私に珠ちゃんは堂々とここは妹ポジションだからと……羨ましいですかと……言ってきた。

 うぅぅぅ、羨ましいです……!

 私はなんとも言えない気持ちになった。


 満足した様子の珠ちゃんが友達の所へ走っていくのをボーッと見送っていると、思井くんは謝ってきた。珠が変なこと言ってゴメンね、と。

 思井くんを抱きしめたらどんな気持ちになるんだろう……?

 そんなことを考えていて、思井くんの謝罪をちゃんと聞いていなかった私は急いで話を逸らした。話題を珠ちゃんの浴衣姿に当てた。可愛かったですねと伝えると思井くんは妹だからよく分からないと答えた。

 小さい子にいつまでも嫉妬しているのも情けなく思った私は可愛いと言ってあげるべきだと口にした。珠ちゃんは思井くんのことが大好きだからきっと飛んで喜ぶだろうなと思った。それに、私だってお姉ちゃんから可愛いと言われて悪い気はしない。たまに怖くはなるけど。

 そ、それに、将来、思井くんが私ばかりを可愛いとか言ってくれるようになれば珠ちゃんに嫉妬される。い、義妹になる珠ちゃんとはギスギスしたくありませんしね……。


 思井くんは家に帰ったら珠ちゃんに言ってみるよと言っていた。

 でも、思井くん……珠ちゃんにばかり優しくしないでくださいね? ちゃんと、私にも優しくしてくださいね?


 思井くんは優しい。だから、私が珠ちゃんと同じ様なことをしても怒ったり文句を言ったり絶対にしないだろう。

 今ここで、思井くんに抱きついたら……思井くんはどんな反応してくれるんですか?

 そう考えるとやっぱりさっきの勝負は絶対に勝っておきたかったなと思った。

 そして、そろそろ花火が始まるということで移動を開始した)

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