第135話 VS金魚すくい―高嶺さんside―

(私の考えではこうだった――。

 金魚すくいで私が圧勝する。そして、条件を使って、私に告白してくださいと言う。なんだか、無理やり言わせるようで気が引けるけど……このまま、いつまでも待っている方が嫌だ。私は今日、思井くんの彼女になりたいんです!

 ……って、意気込んでいたのに……結果はゼロだった。はぁ……。


 赤い小さめの金魚をポイに乗せることは出来た。だけど、暴れられ、虚しく大きな穴を開けられ水の中に戻っていかれた。その様子を隣で見ていた二人の子どもに笑われ、悲しくなった。私の意気込みは何だったのだと……。


 これで、私の負けは確定……後は、思井くんも一匹もすくえない結果で引き分けを狙うしか――。

 僅かな希望を抱いて隣を見ると、そこには鮮やかに金魚をすくう思井くんの姿があった。まるで、幼い子どものように楽しい笑顔を浮かべて次々と金魚をすくう思井くんに――私は見惚れていた。別にカッコいいからだとかじゃない。いえ、思井くんはとてもカッコいいんですけどね!? ただ、そんな言葉では表せなかったのだ。言葉では表せない……だけど、その姿をいつまでも見ていたいと思った。


 結果、思井くんは十五匹もの金魚をすくって私は惨敗だった。私を笑った二人の子どもは興奮して思井くんのことを凄いと言っていた。

 そうなんです。思井くんは凄いんです!

 でも、どうして、それほど上手なんですか!?

 すると、思井くんは金魚すくいのゲームを遊んでいたら、これだけすくえたと答えた。

 ……は、はは、あははは……私の意気込みとは本当になんだったのでしょう……?


 私が落ち込んでいると思井くんから金魚が欲しいか訊かれた。元々、思井くんとの勝負のためだけに遊んだだけで、金魚が欲しいとは思っていなかった。だから、首を横に振った。

 すると、思井くんは店員さんから貰った三匹の金魚を二人の子どもにプレゼントした。二人の子どもはとても嬉しそうにしていて、その様子を見ていた思井くんも笑っていた。

 そして、二人の子どもは元気よく去っていき、思井くんも楽しそうに手を振っていた。

 ……ズルいです。私だけ、どんどん好きにさせられて……ズルいです!)

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