第134話 完璧大和撫子―高嶺さんside―

(メッセージを送ったら、やっぱり、思井くんは既に待っていると返ってきた。急がないと……。

 私は少しだけ早足で向かった。


 思井くんを発見すると焦る気持ちを抑えて先ずは深呼吸した。呼吸を整えて、落ち着いて……そして、声をかけた。

 軽く言葉を交わした私と思井くん。すると、思井くんは私のことをジーッと見つめてきた。私は下着をつけていないことがバレたのかと思ってとてもドキドキだった。だけど、ここで私がボロを出してはいけない。涼しい顔して、どうかしましたか? と訊ねた。

 すると、思井くんは照れたように視線を外しながら、綺麗だと言ってくれた。綺麗だと……言ってくれた!

 私はとても嬉しかった。ママやパパ、お姉ちゃんに言われるよりも思井くんが言ってくれることが一番だった。恥ずかしいけど、嬉しい。そんな気持ちが強くなっていった。

 そして、少し自信がついた。

 浴衣姿の私を見ただけで、思井くんは照れてくれた。じゃあ、もっと、頑張れば告白する気になるかも……?

 そう思うと私は気分が高まっていき、頑張るぞと改めて思った。そして、私達は屋台の方へと向かった。



 屋台は沢山の種類が並んであった。

 お祭りの情報は仕入れようとも考えたけど、何しろ毎年毎年出店されるのが違っていて、これといった情報を仕入れることは出来なかった。

 だから、私はわざと驚いた様子で屋台を見回した。どこから行こうか悩む。だけど、答えはある程度決まっていた。それは、思井くんと勝負することが出来る屋台。輪投げでも射的でも何でもいい。思井くんと勝負出来るならどこでも……!

 そして、金魚すくいの屋台を発見した。


 金魚すくい……金魚すくいかぁ……。

 金魚すくいは少し恥ずかしかった。高校生にもなって、金魚すくいなんて子どもっぽいと思われるかもしれないから。それに、思井くんが勝負に乗ってくるとも限らない。やる価値はそこまで高くない。

 けど、なりふり構ってられなかった私は金魚すくいをしていいか訊ねた。だって、一刻も早く思井くんの彼女になりたかったから。


 すると、思井くんから得意なのかを訊かれた。分からない。金魚すくいなんて最後に遊んだのはずっと昔だから。答えていると思井くんも一緒に遊ぶと言ってきてくれた。きっと、私が一人で遊ぶよりも、二人で遊んだ方が恥ずかしさも軽減されると考えてくれたんだろう。優しい。

 勝負にもちかけるまで一歩前進した。しめしめと思いながら、恥ずかしくないのかを訊いた。思井くんは全然恥ずかしくないと答え、既にやる気満々だったようだ。

 そこで、私は勝負をもちかけた。負けた方が勝った方のいうことをひとつきくという条件付きで。


 思井くんは随分と余裕そうで勝負に乗ってきてくれた。

 それだけ、自信があるのかな?

 思井くんに自信があるのは珍しい。ということは、本当に自信があるのだろう。

 でも、私もそう簡単に負けられない。だって、この結果で思井くんの彼女になれるかもしれないからだ。血が滾った。

 絶対に負けませんよ、思井くん。覚悟してください――!

 そうして、戦いの火蓋が切って落とされた)

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