第124話 カナヅチ―高嶺さんside―

(流れるプールに浸かるとひんやりと身体を包み込む水がとても気持ちよく感じられた。だけど、思井くんは中々入ってこない。どうしたんだろう?

 私は思井くんに呼びかけた。すると、思井くんはプールに入ってきて……溺れた。私はびっくりしてすぐに思井くんに腕を差し出した。思井くんは私の腕を力強く掴みながら咳き込んでいた。そんな思井くんの背中を私はさすってあげた。

 ……あれ、なんだか、これ……カップルみたいじゃないですか?


 私は思井くんに泳げないのかを訊ねると思井くんは顔を少し赤くして涙目になりながら首を縦に振った。そんな思井くんを見て私は可愛くて抱きしめたくなった。だけど、それよりも申し訳ない気持ちが強かった。泳げないのにプールなんて楽しくないに決まっているからだ。しかも、浮き輪はレンタル待ち。

 私は申し訳ない気持ちから思井くんに浮き方を教えてあげようと思った。少しでも楽しんでもらえるように。

 しかし、言ってから気づいた。男の子が女の子に浮き方を教えてもらうのはとても恥ずかしいことではないのかと。

 だけど、思井くんは私に教えてもらえるならありがたいと……。沢山、サービスしてあげたくなった。思井くんが知らないことを何でも教えてあげたくなった。

 でも、思井くんにはそんな不純な気持ちはない。私は邪念を消すようにして温水プールの方へ移動するように言った。

 て、手を繋ぐくらい……良いですよね!?)

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