第122話 お胸より愛で勝負

(時間通りにやって来た電車に乗り込んだ私と思井くん。夏休み中、全然話せていなかったこともあり、会話が尽きなかった。休み中、何をしていたかなど……色々な話をしていた。

 楽しい……!

 ようやく、思井くんと沢山会話が出来て、私は幸せだった。


 すると、ある駅に着いた途端、思井くんは席を立って人混みに埋もれるおばあさんに席を譲った。思井くんはさぞかし当然のようにやっていて、そんな姿に私は胸を撃たれた。思井くんの優しさなど分かりきっていたのに……目の前でやられると、やはりときめいてしまう。

 本当、そういうところですよ……。そういうところに私は――。

 そして、私達は電車を降りて、プール施設に到着した。



 私達は待ち合わせの約束をして、更衣室前で別れた。私は水着に着替えながら、他の方のお胸に目をやった。皆さん皆さんが大きい……という、訳じゃない。中には、私みたいに小さな方もいた。だけど、大半の方が私より大きく、ビキニタイプの水着を着こなしていた。

 ズルい……私だって毎日牛乳飲んでるのに……。せめて、ママかお姉ちゃんくらいあれば、思井くんをもっとドキドキさせることが出来たのに……。

 私は自分のお胸を見下ろしながら更衣室を出た。


 更衣室を出ると既に思井くんが待っていてくれた。私は頑張ってドキドキさせるぞ、と意気込みながら声をかけた。

 すると、振り向いた思井くんは少し困った表情をしていた。よく見ると思井くんに絡む二人の女性の姿があった。大きな谷間を見せつけながら思井くんに迫っていた。私は思井くんを守るために女性達を睨みながら思井くんの前に立った。そしたら、女性達は私を見て急に態度を変え出した。

 どうしよう……? 妹だって思われたかな……? そうだと悲しい……。

 しかし、女性達はそそくさと去っていき、私は無事に思井くんを守ることが出来た。

 ふふふ、お胸の大きさじゃ負けても……思井くんへの愛の大きさは私が一番大きいと分かったんですね。私には絶対に敵わないと思い知ったんですね!

 私は勝ち誇った気でいた)

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