第121話 私服を褒め合う至極の時間

(私は――

『ご、ゴメンね、高嶺さん。遅くなっちゃって……待った?』

『いいえ、私も今来たばかりです』

 ……っていう王道のやり取りをしたいと思っていた。なのに、私が着く前に既に思井くんは着いていたのだ。私は思井くんの姿を見て、とっさに電柱に隠れてしまった。


 え? 思井くんが私を待っていてくれたの? ……ということは、さっき思っていたのは逆になるの!?


 私は待っている方をしたかった。だって、思井くんに待たれていると分かったら絶対にときめいてしまうからだ。と言うか、既に心臓はうるさくなっていた。

 私は手鏡を出して、身だしなみと笑顔の確認をした。

 うん。どこも可笑しい所はない……!

 私は思井くんの元に歩いていって声をかけた。


 思井くんは驚いたようにして挨拶をしてくれた。ちょっと、噛みながら……。そんな思井くんが可愛くてたまらなかった。

 そんなことを考えていると、私は痛い所を突かれた。時間について聞かれたのだ。私は頬を赤くして答えた。緊張していることと、思井くんに早く会いたかったんだと。

 すると、思井くんの頬が赤くなるのが分かった。それを見て、私も一層恥ずかしくなり「友達」という余計な言葉を出してしまった。


 ああああ! どうして、私は余計なことを言っちゃったの!?


 私は後悔した。思井くんを友達以上として見ているのに、友達だと言ってしまったことに。でも、仕方のないこと。だって、私達は今友達だから。

 私は恥ずかしさと後悔を消すために話題を変えた。思井くんがどうしてこんなにも早く着いていたのか聞いたのだ。

 すると、思井くんは私に早く会いたくて待っていた……と答えてくれた。それが、嬉しくて嬉しくて……恥ずかしくて頭が爆発するかと思った。


 私は思井くんと目が合う度に目を逸らしてしまった。私が思井くんをチラチラ見るのはいつものこと。だけど、今日は思井くんの方も私のことを見てくれている気がした。

 私達は妙に気まずかった。久しぶりに会ったからか何を話せばいいか分からなかった。そんな時、思井くんが私を呼んだ。私は何だろうと思って思井くんを見つめた。すると、思井くんは私の私服姿を褒めてくれた。似合ってると言ってくれたのだ!

 私は心の中でお姉ちゃんにありがとう! と、叫びながら思井くんに気に入ってもらえて良かったと伝えた。そして、私も思井くんの私服姿をカッコいいと伝えた。思井くんの私服姿は本当にカッコよくて、大袈裟だけど世界で一番カッコいいと思った。

 私も思井くんも共に赤くなりながらの私服姿を褒め合う時間……とても、楽しかった。でも、いつまでの駅前で待っていても仕方がない。私達は電車に向かった)

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