第118話 作戦勝ち

(『お姉ちゃん。くれぐれも余計なことは言わないこと。少しすれば私に電話させること。分かった?』

 私が立てた作戦はこうだった。

 お姉ちゃんが私の写真を自慢するために思井くんにメッセージを送る。そして、その迷惑行為を私が電話で謝る。そして、プールに行きませんかと誘う……以上。簡単な内容。簡単な内容……だけど緊張する。

 そして、いよいよ思井くんにメッセージを送る時が来た。


 私はお姉ちゃんがちゃんとしてくれるか後ろで見守っていた。そしたら、何やらお姉ちゃんは凄く嬉しそうに楽しそうにしながら思井くんとやり取りをしていた。私はそれが無性に嫌でお姉ちゃんにさっさとスマホを貸してと頼んだ。

 そして、震える指で通話ボタンを押した。静かにコール音がなるに連れて、私もドキドキしていた。電話に出てくれなかったどうしよう……。でも、その不安は杞憂に終わった。

『はい、もしも――』

 私はその聞きたかった声を聞いた瞬間、すぐに返事をしてしまった。思井くんですか? と。愛しい彼の声なのだから聞き間違える訳なんてない。けど、嬉しさのあまり確認してしまった。


 はぁぁ……思井くんの声が。電話の向こうから思井くんの声が……!


 私は嬉しさのあまり目的を忘れそうになった。でも、それだと意味がない。だから、先ずはお姉ちゃんが迷惑かけたことを謝った。そしたら、思井くんは全然迷惑じゃないと答えてくれた。やっぱり、優しいと感じた。そんな思井くんに対して、私は嘘をついてるのが嫌で正直に打ち明けた。声が聞きたかったのだと……。

 そしたら、思井くんも私と同じ気持ちだったと言ってくれた。それが、嬉しくて嬉しくて……幸せだった。本当は今すぐ会いたいと思った。でも、その気持ちを抑えてプールに行きませんかと誘った。


 断られたらどうしよう……少し、大胆だったかな?


 そんな思いが頭をよぎった。でも、思井くんも行きたいと言ってくれて無事に約束出来た。私は心の中で叫びながら、電話を終了した。

 そしたら、事情を伝えていなかったお姉ちゃんがどういうことなのか迫ってきた。でも、私はもうそんなお姉ちゃんの言葉なんて耳に入っていなかった。


 思井くんとプール……思井くんとプール……!


 私は思井くんとプールに行けることが楽しみで仕方がなかった。きっと、スゴく浮かれていたんだと思う。

 だから、私は重要なことに気づいていなかった。


 ……は! プールに行きたいって考えだけで誘ったけど、私水着なんて持ってたっけ!?)

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