2.5章 夏休み ―高嶺さんside―

第116話 酔い覚めまで

「う~ん……氷華ぁ~……」


「重いよ、お姉ちゃん……」


「うぅっ、氷華が私の介抱を浴衣姿で……なんて、幸せなんでしょう。ここは、天国なのですか!?」


「ほら、椅子に座ってお姉ちゃん」


「ありがとう、なのです……」


「もう、やっぱり、お姉ちゃんお酒飲んで……弱いのにどうして飲んじゃったの?」


「だってぇ~、ママとパパは二人で出掛けていて、氷華は思井くんとお祭りへ行って……一人で寂しかったのですよ~よよよよ……」


「そんなに泣かないで、お姉ちゃん。分かったから。寂しかったんだね」


「そうなのです~。そんな可哀想なお姉ちゃんの頭を撫でてほしいのです!」


「特別だからね」


「あぁ~気持ちが浄化されていくのです~!」


(……私のお姉ちゃんだけど、時々本気で怖くなる。こんなので、将来結婚とか出来るのかな? ううん、こんなお姉ちゃんでも受け入れてくれる人が一人はいるはずだからその人に任せないと……。

 そ、そうでないと思井くんとけ、結婚した時にお姉ちゃんまでついて来るかもしれない……。思井くんは優しいからこんなお姉ちゃんが一緒でも文句のひとつも言わないはず。でも、私が嫌なんです! お姉ちゃんが一緒だと思井くんとイチャイチャ出来ません! 夫婦になったら一度はすると噂されている――『ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも、私を食べちゃいますか?』も、お姉ちゃんが一緒だと楽しめません!

 ~~~っ、わ、私は何を一人で先走って妄想しているのでしょう……。まだ、結婚するまでにはまだまだ時間があるというのに……でも、仕方ないんです。

 だって、ようやく思井くんと相思相愛の関係に――もう一度、友達から恋人になれたんですから。嬉しくてたまりません。本当は今も跳び跳ねて喜びたいくらいです!)


「……氷華、また幸せそうに頬を綻ばせていますが、何か良いことでもあったのですか?」


(……酔ってても、私の気持ちには気づかないくせにそんなところには気づくんだ――)


「……うん、とっても良いことがあったよ」


「そうですか。良ければ、酔いが覚めるまで氷華の夏休みが後悔のないものだったのか話してくれませんか?」


「長くなるけど……いいの?」


「勿論なのです。可愛い妹の話なら何時間だって聞けるのです」


「何それ……。いいよ。じゃあ、聞いてもらおうかな」


「聞かせてほしいのです。さ、座って座って」


「うん。それじゃ、話すね。先ずは――」

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