第115話【エピローグ】変えてくれてありがとう

「あ、お帰り、お兄ちゃん」


「ただいま、珠。危ないこと何もなかった?」


「うん。途中まで皆で帰ってきたから。何も危なくなかったよ」


「そっか」


「花火、綺麗だったね!」


「そうだね」


(……花火を思い出すと一緒に高嶺さんが出てくる……。高嶺さんの気持ちは恥ずかしかったけど、嬉しかった……)


「お兄ちゃん、ちゃんと高嶺お姉さん送ってきた? 夜道を高嶺お姉さんみたいな人を一人で帰らせるなんてそれこそ危ないからね」


「ちゃんと送ってきたよ」


「ん、ならよろしい」


(なんだかんだ言って……珠って僕が高嶺さんと上手くいくように沢山アドバイスしてくれてたんだな――。

『妹であっても可愛いければ可愛いと言ってあげた方がいいですよ』――か)


「珠」


「な~に、お兄ちゃん?」


(珠はとっくに浴衣を着替えて部屋着に戻ってるけど……)


「言うの遅くなったけどさ……浴衣姿、似合ってたよ」


「ほ、本当!? 可愛かった!?」


「うん。可愛かったよ」


「やったーーー! お兄ちゃんに可愛いって言ってもらったーーー!」


(高嶺さんの言う通りだった……。珠、ウサギみたいにぴょんぴょん跳ねて喜んでる)


「お兄ちゃん、お祭りの感想言いたいから早く入って」


「はいはい――」


(高嶺さんからメッセージ……?

【きょ、今日は本当に色々とありがとうございました。また、明日、学校で会いましょうね。おやすみなさい】

 ――っ! メッセージの後にさっき撮った写真が……)


「高嶺お姉さんから?」


「うん」


「なんか、良いことあったらしくて良かったね、お兄ちゃん」


「え、なんで?」


「だって、スッゴク嬉しそうにしてるから」


「……うん、とっても良いことがあったんだ」


「そっか……良かったね! お兄ちゃん返事してから入る?」


「そうする」


「じゃ、リビングで待ってるね。お母さ~ん」


(あの日は、高嶺さんともう一度恋人になれるのがこんなにも早いとは思ってなかった……。もっと、時間をかけた先の話だと思ってた。けど、高嶺さんも僕と同じ気持ちでいてくれて……それを、伝えてくれて――。

 初めは、こんなにも高嶺さんのことを好きになるなんて考えもしなかった。デブボッチだった僕はずっと一人でいた。馴染めない訳じゃないけど友達を作ろうとはしなかった。僕が周りに興味がなかったし、周りも僕に興味がなかったから。

 だから、高嶺さんもクラスメイトの一人にしか過ぎなかった。ただの、飛び抜けて美人で可愛いクラスメイトに過ぎなかった。僕なんかじゃ手が届かない高嶺の華だと思ったから。だから、本当はどこかで自分の気持ちに蓋をしていたのかもしれない。高嶺さんと話してみたい……って、いう本当の気持ちに。

 九頭間から高嶺さんに告白しろって言われた時、僕の中では面倒事に巻き込まれたくないって気持ちが大きかった。でも、本当はほんの少しだけ、高嶺さんと話せるかもしれないってことに嬉しかったんだ。勿論、付き合えるとなんか思ってなかったけど。それでも、ほんの少しでも見ているだけの存在の人と言葉を交わせるなら――って思ってたんだ。

 そしたら、高嶺さんは僕と付き合うって言ってくれた。あの日は好きって気持ちより、憧れって気持ちの方が強かったんだと思う。でも、僕は変えられた。高嶺さんのことが好きで好きでたまらないように……。こんなにも自分が誰かのことを好きになるなんて思いもしなかった。こんなにも自分が誰かのことを好きになっていいんだって知らなかった。全部、高嶺さんが教えてくれたんだ!

 だから――)


【ありがとう、高嶺さん。好きだよ】


(――送らなきゃならないって思った。ただの、僕の気持ちだけだけど……僕は高嶺さんが好きだから。きっと、これから何があっても僕は高嶺さんを好きでいつづける自信があるから。

 だから、幸せに出来るよう頑張ろう。悲しませないことも頑張るけど、悲しませてもいいんだって教えてもらったから。だったら、もう高嶺さんを幸せにしてあげられるように頑張るしかないよね)


「あ、返事……」


(……僕を変えてくれて、ありがとう、高嶺さん。僕、高嶺さんを幸せに出来るよう頑張るって決めたから――)


【これからも、よろしくね――!】

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