第113話 おんぶ
「帰ろっか、高嶺さん」
(花火も終わって明日から学校も始まるしもう帰らないと)
「はい……っぅ!」
「だ、大丈夫、高嶺さん!?」
「す、すいません……少し足が痛くなって……」
(高嶺さんの足が……下駄を履いてるとどうしても指の間が痛くなるって高嶺さんも知ってるはずなのに、さっきここに来るために走ってくれたから――)
「高嶺さん……歩けそう?」
「は、はい……」
(大丈夫って言ってるけど、高嶺さんの足は僕のために傷ついたようなもの……それに、これ以上高嶺さんを歩かせて綺麗な足を傷つけたくないし。よし――)
「えっ、お、思井くん……!?」
「僕が高嶺さんをおぶって帰るよ」
「い、いえ……そんな、大丈夫です! 歩けます」
「ううん、僕が高嶺さんの足を痛めたくないんだ。だから、おんぶさせてくれないかな?」
「……っ、で、でも、私、重いかもですし……それに――」
「あははは、高嶺さんが重たいなんて……僕はもっと重たかったよ? 高嶺さんが気にすることないから。ね」
(高嶺さんはありがたいことに、僕をだ、抱きしめたいって思ってくれてた……。正直、正面からは恥ずかしくて何度も何度もまだ出来る気がしないけど……おんぶなら顔を合わせなくていいし、高嶺さんも僕に後ろからくっつけるからう、嬉しいと思うんだよね……ただの自惚れだけど)
「……そ、それでは、お言葉に甘えさせてもらって良いですか?」
「うん!」
「で、では、失礼します……!」
(……っ、高嶺さんから良い香りが――って、ダメダメ。余計なことは考えないで……っと)
「お、落ちないようにしっかり掴まっててね……」
「は、はい……」
「……っ!」
「ど、どうですか……? お、重たくありませんか……?」
「……高嶺さん――そ、そんなに心配することないよ。全然、重たくないから安心して」
「そ、そうですか? 良かったです」
(……っ! あ、安心してからか、高嶺さんがさっきより僕に体重をかけてきたような気が……だ、だから、背中に……この前と似たような感触が当たって……)
「? どうかしましたか? 思井くん、耳まで真っ赤ですよ?」
「ええっ! そ、そんなことないよ!?」
「そう、ですか……? 真っ赤だと思うんですけど……」
「う、動くからしっかり掴まっててくださいね!」
(そりゃ、真っ赤になりますよ!
だって、高嶺さん……多分、下着をつけてな――だ、ダメダメ。僕の勘違いかもしれないんだから決めつけちゃ……。でも、似ているような気がするし――ああ、もう気になって仕方がない! 正面だと、どうしても顔に意識がいっちゃうからそんなに気にならなかったけど……う、後ろからだと確かな密着が……ああ、後ろからの方がよっぽど恥ずかしい! 早く帰ってしまおう!)
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