第112話 二度目の告白

(『好きです、高嶺さん! 僕と付き合ってください!』――僕が高嶺さんに初めて告白した時のように、高嶺さんも下を向いて手だけを出してる――。

 ……って、何冷静に分析しちゃってるんだよ、僕! 高嶺さんにここまで言われて応えないなんて……それこそ、僕はまた昔の僕に戻ってしまう。

 だから――)


「た、高嶺さん!」


「はい」


(……っ、その真っ直ぐな瞳に見られると僕の悩みなんて本当にちっぽけのように思える……。

 悲しみも二人で乗り越えたらいい、か――)


「高嶺さん……僕は高嶺さんのことが好きです。だから、悲しませたくありません。でも、もしかしたら悲しませてしまうかもしれません。それでも……っ、こんな僕でも高嶺さんの彼氏になっていいんですか?」


「もちろんです!」


(高嶺さんのとびっきりの笑顔で応えられたら……もう、あとには退けない……)


「じゃあ、思井くん。私と――」


「待って、高嶺さん。そこから先は僕に言わせて」


「はい」


(あの時言った言葉だけど……あの時とは違う。あの時は好きじゃなかった。けど、今はちゃんと高嶺さんのことが好きだ。好きで好きでたまらない。だから、僕は高嶺さんに告白する――!)


「好きです、高嶺さん。僕と付き合ってください」


(……って、告白するって意気込んだけど……結局、恥ずかしくて下を向いて手を出しちゃって――)


「はい。私は思井くんの彼女です」


「た、高嶺さん!?」


「ずっと……こうしたかったんです。さっき珠ちゃんが思井くんに抱きついているのを見て、妬いていました。思井くんの妹相手に妬いちゃうなんて……情けないですよね。でも、私も堂々とくっつきたいってずっと思っていたんです。それに、こうしたら私の気持ちがいっぱい伝わると思うんです。ど、どうですか?」


(確かに、高嶺さんからドキドキっていう音がいっぱい聞こえてくる……。僕の音も高嶺さんに伝わってると思うんだけど……。本当のことを言えば……抱きしめられなくても高嶺さんの気持ちは言葉だけでも十分に伝わってきてた……。けど、こうやって高嶺さんに抱きしめられたり、珠相手にも妬いてくれてたんだって知って……僕はもう死にそうです)


「ありがとう、高嶺さん……。いっぱい、伝わってきてるよ」


「ふふ、良かったです。わぁぁ……!」


(まるで僕と高嶺さんを祝福してくれているかのようにタイミングよく一斉に花火が……もう、終わりかけなのか。そう考えると少し寂しいけど……僕と高嶺さんは違う。僕と高嶺さんはここから始まるんだ。新しく友達から恋人になって――)


「……高嶺さん、綺麗だね……!」


(本当に沢山の花火が次々と現れては夜空に消えていくこの光景から目を逸らせない……)


「……思井くん」


「あ、な、何……?」


(危ない危ない。高嶺さんが何か言おうとしてたのに僕は花火に夢中で……そのせいで、高嶺さんに腕をツンツンされちゃった)


「思井くん――」


「……っ!?」


(高嶺さんが何か言ったけど……最後の花火の音がうるさくて聞き取れなかった。でも、高嶺さんの口の動き――『好き』に見えたような……って、気のせいだよね。流石に、好きって言われたからって思い込んじゃいけないよ。

 ……でも、じゃあ、高嶺さんはなんて言ったんだろう? もう、満足そうに上を向いてるから聞きにくい……ま、いっか。気になるけど、いつかまた聞けば。だって、時間はこれからもいっぱいあるんだしね)

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