第111話 好き
「高嶺、さん……?」
(えっ、どういう意味ですか……? もしかして、僕と友達をやめたい……とか? でも、好きな人って――)
「あの、高嶺さん……どういう……?」
「…………」
(高嶺さん……何も応えてくれない。僕の手を握ったままずっと見つめてきて――もう、花火なんて見れないくらい僕も高嶺さんを見つめ返していて――)
「……好き、です」
「えっ……」
(今、高嶺さん好き……って言った!? 僕の気のせい……? 聞き間違い……?)
「私は……思井くんのことが好き。好きなんです」
「……っ!」
(やっぱり、僕の聞き間違いなんかじゃなかった! 今、高嶺さんの口からはっきりと好きって……えぇぇぇぇぇ!?
……って、待て待て待て待て。別に大して驚くことじゃないでしょ。だって、僕と高嶺さんは友達で……僕も高嶺さんが好き。僕は友達以上の好きって気持ちがあるけど……高嶺さんは友達として好き、だよ。危ない。自惚れちゃうところだった。
……でも、高嶺さんは友達をやめたいような口ぶりで……つまり、それって――っ!?)
「……思井くん、真っ赤になってないで何か言ってください……。私ばかり、恥ずかしいです……」
「あ、ご、ゴメン! その、いきなり過ぎて驚いちゃったと言うか……」
(ビックリと可愛さで心臓止まってた……。
顔も見なくても分かる。めっちゃ熱いし、高嶺さんに言われた通り真っ赤になってるんだろう……高嶺さんもだけど)
「いきなりなのはお互い様ですよね。私だって思井くんからいきなりこ、告白されたんですし……」
「そう、だけど……」
「じゃあ、今度は思井くんが返事を聞かせてください」
(……っ、そんなの高嶺さんと恋人関係に戻れるなら嬉しいよ! だって、いつかは戻りたいってずっと思ってるんだから!
……でも、僕は――)
「ゴメン、高嶺さん……返事は出せない……」
「どうしてですか? 思井くんは私のこと嫌いになったんですか?」
「そ、そんなことないよ! この夏休みだってずっと高嶺さんのことを考えていたんだ。高嶺さんと会える度に嬉しくて……今日だって、本当に楽しみで仕方なかった。それくらい、僕だって高嶺さんのことが好きだよ!
……でも――」
「でも……?」
「僕、怖いんだ。まだ、そんなに時間も経っていないのに高嶺さんと恋人になったら、また高嶺さんを悲しませてしまうんじゃないかって……。僕は高嶺さんをもう悲しませたくないって思ってるから……だから――」
(応えられない。本当は応えたい。今すぐ高嶺さんの彼氏になりたい。でも、それで本当に高嶺さんを悲しませないでいられるのか自信がない。高嶺さんが悲しんで流す涙なんて僕はもう――)
「思井くんの気持ちは分かりました。でも、私は思井くんと一緒にいれば悲しみなんて関係ないと思ってますよ。だって、好きですから」
「……っ!」
(今日の高嶺さんはなんなんですか!? 好き好きって……僕を殺すつもりなんですか!?)
「思井くんが私を悲しませないためって考えていること……私は心の底から嬉しいですよ。でも、完璧な人間なんてどこにもいません。私だって思井くんを悲しませることがあります。今だって、思井くんはきっと私のことを思って悲しんでいる……違いますか?」
(……っ、高嶺さん、よく分かりますね。僕が高嶺さんのことで悲しんでいるなんて……)
「……うん、高嶺さんが望むような応えを出せなくて、僕は高嶺さんに申し訳なく思ってる……」
「ほら、私だって思井くんを悲しませているんです。だから、思井くんも私を悲しませていいんです。本当に悲しくてどうしようもなかったら……その時は二人で考えればいいじゃないですか。だって、こ、恋人になったらそれくらい乗り越える力も必要だと――私は思います!
そ、それに……! 私、断られると一番悲しくなっちゃいます。だから――」
(……っ、高嶺さんが向こうまで歩いて行って……くるっと振り返って――)
「――思井くん、私を思井くんのか、彼女に……してください!」
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