第110話 友達でいないといけないんですか?

「小さなお子さまが危なくならないようにしてください。大人の方は後ろの方でお願いいたします!」


(町内のイベントだから、人が多くても底は知れてる。どこかの超人気イベント、とかじゃないから。でも――)


「やっぱり、少し見辛くなりそうだね……」


「そう、ですね……」


(僕が迷子の女の子を助けていたせいで、前の方は小さな子ども、後ろの方は大人で神社の前は埋めつくされてる。僕達は完全に遅れたから後ろの方で大きな人の頭が邪魔になってる。これじゃ、見ることは出来ても綺麗な花火は見れない……)


「ゴメンね、高嶺さん。僕が――っ!?」


「思井くん。こっちに来てください!」


「えっ!? ど、どこに行くつもりなの!?」


「ついてきてください!」


(高嶺さんがいきなり僕の手をとって走り出したけど……どこに行くつもりですか!?

 ……って、そっちは――林の方ですよ!?)



「ハァハァ……こ、ここからなら、見えそうです……」


「う、うん……そうだけど……。ここって――立ち入り禁止なんじゃ……」


(林っていうほど木々が並んでる訳じゃないけど……ここは、木々が並ぶ道を抜けて周りには何もない場所。何もないが故に、立ち入り禁止の標識が出てたはずだけど……)


「い、今だけは私と思井くんは悪の人です。夜に溶け込む悪人になってください!」


「高嶺さん……なにを――」


(……っ、もう花火が上がっちゃったんだ……。あ、でも、高嶺さんの言う通り、ここからだとよく見える)


「思井くん! 見えましたね!」


「う、うん……」


「わぁぁぁ~~~」


(……まぁ、高嶺さんが幸せそうだし別にいっか。後で怒られたら謝ればいいんだし。

 にしても、色々な色や種類の花火が打ち上げられてて綺麗だな……。この光景を高嶺さんと見れることが出来て良かった……。あの時、勇気を出して誘ってみて本当に良かった……!)


「思井くん凄いですね……あんなにも綺麗な花火が沢山――」


「……っ!? ど、どうしたの、高嶺さん……?」


(花火に夢中になってたら高嶺さんがいきなり手をキュット握ってきて――しかも、上目遣いでこっちを見てくるし……ヤバい、ドキドキする!)


「――思井くん」


「は、はい!」


(緊張して敬語になっちゃった……。でも、しょうがないよ。だって、ここは人気のない暗がり……。そんな場所で学年一可愛くて美人の高嶺さんと二人きり……しかも、手を握られた状況で……こんなの緊張しない男がいるはずがない!)


「私、嬉しいです。好きな人と一緒に花火を見れて……」


「……っ!?」


「思井くん。私はいつまで思井くんの友達でいないといけないんですか?」

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