第107話 不穏な声
(ただ、無言で歩き続けて数分……何か話題を――って、考えてるけど、自分から手を繋いだこともあって緊張が……て、手汗とか大丈夫かな……?
高嶺さんから何か話してくれる訳じゃないし……なんだか、気不味い……)
「あ、あの――っ!」
「あ、あの――っ!」
(また、ハモっちゃった!?)
「……ふふふ、また、ハモってしまいましたね」
「そ、そうだね……」
「今回は、思井くんからどうぞ」
「あ、うん――」
(どうしよう……何も考えてないんです!
ずっと、黙ったままなのが気不味いから声を出しただけで……話す内容は――あ、そ、そうだ!)
「た、高嶺さん。宿題はもう終わりましたか?」
「宿題、ですか?」
「う、うん……」
(……僕、会話のストックが無さすぎる!
僕は高嶺さんとならどんな会話でも楽しいけど……どうせなら、高嶺さんに面白い人だって思ってほしい。
なのに……宿題って! 宿題って! 共通話題だからって宿題はないでしょ!)
「クスクス。もう、終わりましたよ」
「あ、ほ、本当? お、お疲れ様です」
「ええ。これも全部思井くんのおかげです。ありがとうございました」
「え、僕!? 高嶺さんが頑張ったからでしょ!?」
(高嶺さんが宿題を終わらせたことに僕と何の関係があるの!? 答えを教えたりもしてないし……言ってることが分かりません!)
「ふふ、思井くんのおかげですよ。だって――」
「う、わぁぁぁぁぁん――!!」
「な、なんでしょう!?」
(泣き声……みたいな気がするけど、分からない。でも――)
「ゴメン、高嶺さん。僕――」
「はい、分かっています。行きましょう!」
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