第102話 VS金魚すくい

「うぅ~一匹もすくえませんでした……」


「きゃはははは。お姉ちゃん下手~」

「ダッセェーーー!」


「わ、笑わないでください……」


「それに比べて、お兄ちゃんすごーい。何匹目~?」

「カッケェーーー!」


(ふぅ、そろそろポイも破けそうだし、後は出目金に挑戦して終わりかな。

 ……っ、中々、すばしっこい。でも、角に追いつめて、後ろから――)


「……っと!」


「スゲーーー、出目金すくっちゃったよ!」

「お兄ちゃんなんでそんなに上手なの~?」


(うわっ! 金魚すくいに夢中になってたらいつの間にか周りに子ども達が……)


「お、思井くん……とても、上手なんですね……」


(高嶺さん……予想通りの結果だけど、一匹もすくえなかったのか……。ポイの真ん中に悲しみの大きな穴が空いてる……)


「俺にもすくい方教えてくれよ!」

「あ、ズルい。私も私も!」


「思井くん……私にも強さの秘訣、教えてください……」


「う~ん、そんなこと言われても……特に何もないんだよね……。スマホのゲームでさ、金魚すくいがあったからそれを遊んでたら上手くいったって言うか……」


「全然参考になんねーよ!」

「じゃあ、お兄ちゃんは金魚すくいの天才なんだね~!」


「あははは、そんなことないよ。コツさえ掴めば君達にも出来るよ」


「でも、もう……」

「うん~。あんまり、お金使えないんだ……。金魚、欲しかったんだけど……」


「あー……高嶺さん」


「は、はい。何ですか?」


「僕がすくった金魚、いるかな?」


「いえ……元々、持って帰るつもりはありませんでしたよ?」


「そっか。じゃあ、おじさん。金魚は何匹まで持って帰っていいんですか?」


「うちも商売してるから三匹までにしてくれ。兄ちゃんに十五匹も持って帰られると大赤字だ」


「じゃあ、三匹だけお願いします」


「あいよ。兄ちゃんがすくった中から比較的大きくて元気があるやつを選んでおいたぞ」


「ありがとうございます。

 じゃあ――はい」


「えっ? く、くれるの?」


「うん。君達にあげる。二人で仲良く育ててあげてね」


「あ、ありがとう!」

「お兄ちゃん、カッケェーーー!」

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