第100話 完璧大和撫子

「あ~思井くんじゃん!」

「こんな所でどうしたの~?」


(ゲッ……クラスの女子が……)


「もしかして、思井くんも今日参加するの~?」

「やだ~。それなら、もっと化粧してくればよかった~」


「えっ、いや、僕は別に――」


(どうしよう……こんなにも、一斉に言われると断る勇気が……。それに、僕……クラスのグループになんて入ってないから、そもそもそんなこと知らなかったし)


「はいはーーーい。思井くんには思井くんの約束があるから邪魔しないで行こ」


「え~、有も一緒がいいでしょ~?」


「無理言っちゃダメだよ。さ、行こ」


「ちょ、ちょっと、押さないでよ」


(なんだなんだ? 笠井さんが女子の皆を押して、神社の方へ消えて――っ!

 消える前にウインク……助けてくれたのかな?

 ありがとう、笠井さん……)


「お、お待たせしました、思井くん」


「た、高嶺さ――」


「こんばんは」


(グッ……分かってたけど、高嶺さんの浴衣姿――似合いすぎる!

 幾つもの花が散りばめられた水色の浴衣。腕にかけられた紫色の巾着。後ろでひとつに纏められた髪の毛――元々、大和撫子って感じの高嶺さんだから、浴衣が似合うのは当然なんだけど……思ってた以上に似合いすぎて……)


「どうかしましたか、思井くん?」


「き、綺麗です……」


(……は! 無意識の内に僕は何を……でも、言わないといけない気がして……)


「……っ、そ、そうですか!? その、ありがとうございます……!」


「う、うん……」


(なんか、半袖と半ズボンで来ちゃったのが申し訳ない気がする……。僕もレンタルでもして浴衣を着ればよかった……似合いはしないだろうけど……。でも、それだけ、高嶺さんの隣に並ぶのが浴衣姿じゃないとダメな気が――)


「お、思井くん。い、行きましょう!」


「う、うん!」

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