第99話 笠井さんの謝罪

「お、思井くんは誰と来てるの?」


「ああ、うん。高嶺さんと。今は高嶺さん待ち中だよ」


「……やっぱり、高嶺さんとなんだ。そりゃ、そうだよね……」


(あれ? 高嶺さんの名前を聞いた途端、元気をなくしたような気が……)


「高嶺さんがどうかしたの?」


「なんで?」


「僕の勘違いかもしれないけど……笠井さん、元気がないように見えたから」


「……っ、凄いね、思井くん。私の違いになんて普通気づかないでしょ……」


「どうしたの?」


「いや、高嶺さんって凄いな~って思って」


「高嶺さんが凄い?」


「だって、誰も分からなかった思井くんを一目見ただけで分かったんだよ? 彼女だったから当然のことかもしれないけど……友達の私は気づくことが出来なかった……。それが、思井くんを傷つけたみたいで申し訳ないよ。ゴメンね……」


(笠井さん……涙を溜めて……。そっか。笠井さんはずっと気にしていたんだ。僕を僕じゃないと間違えたことを)


「……ありがとう、笠井さん。でも、笠井さんが気にすることじゃないよ。僕だって、最初鏡で自分を見たときは誰ぇぇぇ――ってなったからさ」


「ううん、それだけじゃないの。思井くんの気持ちを知りもしないで勝手に軽蔑しちゃってさ……自分で自分を軽蔑するよ。本当にごめんなさい」


「そ、そんな……頭を上げてよ。笠井さんは何ひとつ悪くないんだから気にしないで」


「でも……」


「僕ね、笠井さんには感謝してるんだ」


「え……」


「だって、笠井さんはあの頃の僕と高嶺さんが付き合っててもお似合いって言ってくれたからさ。クラスの皆は絶対にそんなこと言わないけど笠井さんだけは言ってくれた……僕はそれが嬉しかったんだよ。ああ、笠井さんは僕がデブボッチでも関係なく接してくれてたんだって」


「それは、友達だから……」


「でしょ? だったら、もう気にすることないよ。それに、友達だからこそ、間違えてることは間違えてるって言い合えるんじゃないかな?」


「思井くんは私のこと嫌いになってないの……?」


「ならないよ。むしろ、笠井さんが僕のこと嫌いになったんじゃないかと心配してる」


「き、嫌いになんかなってないよ!

 でも、なんで……?」


「笠井さんとは友達でいたいから……」


「……っ、も、もう、恥ずかしいな~。思井くんってさ、この前もそうだったけど、意外と大胆だよね」


「う……ゴメン」


(それは、言わないで……自分でも、たまに自分が信じられないから――)


「でも、ありがと。おかげでスッキリした!」

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