第95話 ドアドン

「高嶺さん……結構、人多いから気をつけてね……。出来るだけ、僕が守るから」


(……高嶺さん、言葉無しで頷くだけ。あれから、『帰りましょう……』の一言しか発してくれないし――心配だよ……。

 ったく、あのお姉さん……何が、ラッキースケベ展開ですか! おかげで高嶺さんがこんな小動物みたいにか弱くなっちゃったじゃないですか!

 しかも、電車内も夕方だからか行きよりも人が多くて座れないし……クソ、高嶺さんを休ませてあげたいのに……!)


「……うわっ」


「……っ!」


(いきなり、電車が揺れて……思わずドアに手をついちゃったけど、これって――壁ドンならぬドアドン、だよね!?

 高嶺さんの顔がこんな至近距離に――)


「ご、ゴメンね、高嶺さん。今、退くから……」


(……って、あれ? う、動けない……押し返せない。それどころか、押してくる力が強すぎて腕の力が――)


「っ、た、高嶺さん……!?」


(高嶺さんが無言のまま僕に額をコツン……と、押しつけてくる、だと!? え、な、何、この状況!? 何か分からないけどこのシチュエーション……最高に萌える! 僕の弱まっていた腕の力が一気に戻っていくような気がして――ウォォォォォ、高嶺さんのことは僕が絶対に守る!)

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