第94話 ポロリしちゃった……

「じゃ、説明するのでよく聞いてくださいねー」


「はい!」


「先ずは、彼氏さん」


(ぶふぅぅぅーーー! か、彼氏!?

 案内役のお姉さん、盛大に間違ってます! ほら、高嶺さんも恥ずかしがって……って、あれ、気のせいかな? 高嶺さん、満更でもないような……と、とにかく、間違いを正さないと!)


「あの、僕は彼氏じゃなくて……友達で……」


「友達ぃ~? あははは、何を冗談を。ウォータースライダーを一緒に滑ろうという仲なのにカップルじゃない訳がないじゃないですか。それとも、夏休みだっていうのに彼氏がいなくて毎日毎日バイト三昧の私への嫌がらせですか?」


(うっ……目が怖い。笑ってるけど笑ってない!)


「ご、ごめんなさい! でも――」


「思井くん……。私、気にしないので堂々と彼氏と言ってください。ね?」


(高嶺さんがここまで言ってくれてるんだし……ここは、彼氏って言っちゃって良いですか!?)


「あの、僕はどうしたら良いんですか……?」


「先ず、彼女さんの腰辺りに腕を回してください。そして、ちゃんと抱きしめてください。二人同時に下までいかないと危険ですからね」


「わ、分かりました……」


「それで、彼女さん。彼女さんは、彼氏さんの股の間に入って離れないように座ってください。その後に私が後ろから押しますので」


「は、はい!」


「それじゃ、実践してくださ~い」


(……っ、先ず、高嶺さんの腰に腕を回すって言われても……やっぱり、出来る訳が……)


「思井くん。私の腰はここですよ」


(……っ、高嶺さんが僕の手をとって腰まで誘導してくれて……ほ、細くてすべすべして――)


「あ、彼氏さん。滑ってる途中は危険ですのでくれぐれもやらしいことはしないでくださいね」


「し、しませんよ!

 ……って、言うか、やっぱり、僕にはこれ以上は無理と言うか――」


(だって、僕の股の間に高嶺さんが座るんでしょ!? それって、つまり――)


「はいは~い、後がつかえているので早くしてくださーい。はい、座って」


「えっ、ちょっと……」


「はい、彼女さんも」


(……っ、こんなのまるで、僕が高嶺さんを後ろから抱きしめてるような……)


「彼氏さん……ここは、ハッキリと決めるところですよ。だから、ラッキースケベ展開、用意してあげますね……」


「あの、どういう……」


(耳もとで誰にも聞かれないように何を……?)


「は~い、楽しいイチャイチャの時間へ行ってらっしゃ~い!

 ふふ、私に感謝するんですよ。絶対にないことが実現するんですからね!」


(えっ? なんで、店員さんは僕の背中を押してない方の腕を伸ば――)


「……っ!? あの、店員さ――キャァァァァ――!」


「ウワァァァァ――!」


(こ、これ……思ってた以上に速くて、怖……っ、高嶺さんには申し訳ない、けど――)


「……っ!? あ、あの、思井くん。そ。そんなに強く抱きしめられると……う、嬉しいんですけどぉぉぉぉ――」


(……っ、もう、水の中。一瞬の出来事だった……)


「ぷはっ! は~は~……い、一瞬だったね、高嶺さ――っ!?

 あ、あのののの……た、高嶺さん、い、いきなり何ををををを……」


「ふ、振り返らないでください!」


「で、でも、この状況は……」


「お、お願いですから……今だけは……」


(……っ、今度はさっきとは逆で僕が高嶺さんに後ろから力強く抱きしめられて……し、しかも、背中に当たってるのって――)


「た、高嶺さん……あの……」


「す、すいませんすいません。こんなもの押しつけてしまって……。でも、絶対起こらないはずなのに何故か水着が流されてしまって……」


(――や、やっぱり、背中に当たってるのって高嶺さんのお、おぱ、おぱぱぱぱ、おっぱいぃぃぃぃ――!

 し、しかも、な、生でででで――や、ヤバい……小ぶりだけど柔らかくて気持ちいい感触が直に伝わって……もう、倒れる……。

 って、意識を失いそうにしてるんじゃない! 早く、高嶺さんの水着を見つけないと――)


「あ、あったよ、高嶺さん」


「で、では、そこまで誘導してくれますか……? その、今の姿を誰かに見せることは嫌、ですので……」


「う、うん……!」


(そんなの僕だって見せたくないよ! で、でも、幸い水の勢いが強くて泡立ってるしここには僕と高嶺さんしかいない。次の人が滑ってくる前に水に半分以上沈んだまま移動すれば大丈夫、なはず)


「ど、どうぞ、高嶺さん。僕が隠してるから今の内につけ直してください!」

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