第93話 ポロリは見てみたいのが定め

「キャァァァァ――!」

「イヤァァァァ――!」


(数回に一回聞こえてくる叫び声。多分、ポロリしちゃったんだろうな……。大変、気になります! 見たいです!

 でも……なんでか、高嶺さんが涙目になりながら、子犬のように僕を見てくるからチラ見も出来ない……)


「お、思井くんもやっぱり、ぽ、ポロリって見たいもの、なんですか……?」


「え!?」


(ぼ、僕が見たそうにしてたのバレちゃった!?)


「そ、そそ、そそそんなことな、ないですよ!?」


「そ、そうなんですね……思井くんがそういう人で安心しました」


「ち、因みに、どうしてそういう風に思ったの……?」


「いえ、他の男の人達はあの羨ましい声が聞こえる度に目を丸くして、血眼になって探しているので……思井くんもそうなのかなと……」


(ぐはぁぁぁ! あ、危ない……もう少しで僕も血眼になって探していたかもしれない。でも、僕、臆病だから結局、こうやってこそこそと盗み見るくらいしか出来ないんだよね……)


「で、でもさ、お一人様だったらまだましだけど、彼女と一緒にいる人はさ、サイテーだよねー。彼女がいるのに他の女の人を見ようとするんだもんね」


(これ、スッゴいブーメランだよね……。高嶺さんは僕の彼女じゃないけど、一緒に来てる友達なんだもん! 僕は絶対にポロリしてるところなんてみ、見ないんだから!)


「はい。皆さん、どうやら怒られているようでした」


「……あの、高嶺さん。ジーッと見つめてどうしたの……?」


「いえ、気にしないでください。一応のためですから」


(な、なんだか、怖いよ……!)



「い、いよいよ、次だね」


(ふぅ、な、なんとか、ポロリの誘惑にも耐えて目前まで来たぞ!

 まぁ、ここからだと、ポロリなんて絶対見えないから誘惑もなにもなかったんだけど……)


「はい。わくわくですね」


「そう、だね……」


(楽しみしてる高嶺さんには悪いけど、やっぱり、滑れないかも……。だって、目の前のカップルがあんなイチャイチャしてるのなんて見ちゃったら――う、うわぁ、彼氏の腕、普通に彼女の胸に当たってるよ。彼女も気にしないで彼氏に抱かれながら股の間に座ってるし……なんで、あんなに抵抗なく出来るの!?)


「次の方、どうぞー!」


「行きましょう、思井くん」


(……っ、いよいよ、僕達の番が――)

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