第77話 耳が幸せ
「いきなり、すいません……」
「う、ううん、大丈夫だよ」
(高嶺さんの声が……高嶺さんの声がスマホの向こうから……耳が溶けそう……)
「それより、どうしたの?」
「いえ、また、お姉ちゃんが思井くんに迷惑をかけていたので謝ろうかと……」
「いや、全然迷惑なんかじゃないよ」
(むしろ、高嶺さんの写真を頂けて感謝感謝です!)
「すいません……嘘です。本当は思井くんの声が聞きたくてですね……電話させてもらったんです」
(……っ、高嶺さん……)
「ぼ、僕も高嶺さんの声が聞きたかったです」
「ほ、本当ですか……?」
「うん。だから、今こうして話せてるのがスゴく嬉しいよ」
「わ、私もです……!」
(高嶺さんと久しぶりに話せて嬉しいはずなのに、何を話せばいいか分からない……。高嶺さんも黙ったままだし、何か話さないと気まずい……)
「あの――っ」
「あの――っ」
「あ、ご、ゴメン。高嶺さんからどうぞ」
「い、いえ……こちらこそ。思井くんの方から――」
「いやいや、高嶺さんから」
「いえいえ、思井くんから」
「あのぉ~、イチャイチャするのならそろそろスマホ返してほしいのですが……と言いますか、羨ましいのです! 私も仲間にいれてほしいのです!」
「……水華さん、近くにいるの……?」
「……はい、私の後ろに……。
あの、思井くん。明後日、何かご予定はありますか!?」
「う、ううん、何もないけど」
「で、でしたら、一緒にプールに行きませんか!?」
「ぷ、プール!?」
「はい。あの、隣町に新しく出来たらしくて……思井くんと行ってみたいなって思ってたんです!」
(高嶺さんとプール……高嶺さんとプール……!? そんなの、絶対楽しいに決まってる!)
「……行く。行こう高嶺さん。ううん、違う。高嶺さん、僕と一緒にプールに行ってください!」
「は、はい!」
「ぷ、プール……? 氷華が男と二人きりでプール……? そ、そんなのダメなのです! 氷華が毒されてしまいます! なので、私も行きます!」
「お姉ちゃんはお仕事でしょ。それに、私と思井くんの時間を邪魔しないで!」
「そ、それは……でも……」
「そ、それじゃ、思井くん……。明後日、朝の十時に駅前に集合で大丈夫ですか?」
「う、うん! 絶対に遅れないで行くよ!」
「そ、それじゃ、楽しみにしてますね……! 切ります」
「うん、僕も今から楽しみだよ。それじゃあね」
「はい、さようなら」
(……高嶺さんとプールか……ヤバい、顔が自然にニヤニヤとしてしまう……って、僕水着なんて持ってたっけ!?)
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