第71話【閑話】認識
「ふぅ……ちゃんと、結べたよ、高嶺さん」
「よ、良かったです。私の足と思井くんの足とじゃどうしてもサイズが合うか分かりませんでしたから……。こっちも、ちゃんと結べました。どうですか?」
「……っ……!」
(高嶺さん……気づいているか分からないけど、君は今……生足むき出し状態なんですよ!?
高嶺さんは僕に結べたミサンガを見せて、感想を求めているのかも……でも、もう僕の目にはミサンガより、高嶺さんの足が――)
「に、似合ってるね……!」
「そ、そうですか……? ん、思井くん。そっぽを向いてどうしたんですか?」
「いや、その……刺激が強すぎると言うか……」
「刺激……?」
(き、気づいてないんですか!?)
「う、ううん、何でもないよ。そ、それより、高嶺さんはよく僕の姿を見て、僕だって分かったよね。誰も気づかなかったのに……」
(そう……普通はダイエットしてきた人がいれば……『わーすごーい』とか、『めっちゃ、痩せたねー』とか『良いじゃん!』とか言われるものだと思ってた……。
べ、別に期待していた訳じゃないし……僕が自分でやっただけだからだそんなの求めてなかったけど……誰も気づかないのは流石に酷い!
でも、高嶺さんだけは……僕のことを……僕だって気づいてくれた――)
「? そんなの、当たり前じゃないですか? 姿が変わっても思井くんに違いはないですよ」
「いや、でも……僕、自分で言うのもなんだけど……結構、変わったよ?」
(そう、僕は努力のかいあって随分と変わった。体重は激減したし、身体中の無駄な脂肪も全て消えた。食事も変えたおかげか、脂肪が身長に代わり、大きくもなった。髪もボサボサから、ちゃんと整えた。
だから、クラスの皆が僕だって気づかなかったのは無理もない話……。僕だって、最初鏡で姿を見たときは、『誰だよ、コイツ!』って思ったから)
「思井くん。思井くんの姿がどれだけ変わっても私は思井くんだって気づきますよ。思井くんから出てる思井くんオーラは変わりませんからね!」
「僕の……オーラ?」
「そ、それに……私がどれだけ思井くんを見ていると……」
「それって、どういう……」
「~~~っ、い、今のは忘れてください! そ、それより、思井くん。無茶はしていませんか? いきなり、随分と変わると身体に不可がかかるんじゃないかと……」
「ううん、実はだけどね……僕、昔はあんなに太ってなかったんだよ。だから、痩せても全然無茶じゃないよ」
「そ、そうなんですね!」
「うん」
(……高嶺さん、急に話を変えたけどさっきはなんて――確か、僕をどれだけ見ているか……とか言っていたような……。
き、気のせいだよね……)
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