第68話 堂々宣言禁止

(高嶺さん……ずっと、僕の腕に抱きついたままだけど……歩きにくくないのかな?

 周りからはどう見られてるんだろう? 僕達は友達なのに、なんだかいけないことをしているような気がする)


「そ、そう言えば、高嶺さん。テストの結果はどうだったの?」


「あ、い、いつも通りの点数でした」


「そっか……おめでとう」


「あ、ありがとうございます。それで、先生にひとつ言われたんですよね。そろそろ、学年一位でも目指してみてはどうでしょう、と……」


「学年一位……?」


(そんなの、高嶺さんはもうなってますよ! 美しさナンバーワンに!)


「はい。どうやら、一学期の成績がクラス内で一位だったらしいんです。先生は私の去年からの成績も知っているようで……どうやら、私はもう少し勉強すれば学年一位になれるらしくて……」


「そうなんだ……。それで、高嶺さんはどうしたいの?」


「分かりません。正直、興味もありませんでした。多分、私よりも成績が良い人は私よりも真剣に勉強をしている人達です。私は、ただ先生達の期待に応えるようにだけ勉強しています。そんな、下らない理由だけで本気で頑張っている人に勝っても迷惑だと思うんです」


「そっか……まぁ、高嶺さんが決めることだし、好きにしたらいいと思うよ。でも、僕は高嶺さんが勉強している理由を下らないとは思わない。毎回、ちゃんと努力してるんだし、先生もそれを感じて提案してくれたんじゃないかな?」


「そう、なんですかね……?」


「そうだよ。高嶺さんの努力は凄いことなんだから自信をもって!

 ……って、いっつも赤点ギリギリ回避の僕なんかに言われても無理だよね……」


「……いいえ、思井くんがそう言ってくれるなら少し考えてみます。ありがとうございます」


「う、ううん……僕が言えるのなんてこれくらいだから……」


「こ、これくらいじゃありませんよ……。思井くんの言葉はいつも……」


「え?」


「い、いいえ、何でもありません。

 あ、あと、教室で堂々と愛を叫ぶことはやめてくださいと釘を刺されました……」


「あ、そ、そうだね……僕も、もっと場所を考えてたら良かったよ……。その、本当にこの前のことといい、今日のことといい……色々とゴメン」


「そんな……先生にも事情を説明して、もう大丈夫だと言っておきましたけど……私だってカッとして、思井くんをぶってしまって……本当にすいませんでした」


「ううん、僕が全体的に悪かったんだ。高嶺さんが謝る必要なんかないよ。

 そ、それで、なんだけど……高嶺さん、手を出してもらっても良いかな?」


「思井くんの腕を掴んでいない片方だけで良いのでしたら……」


「う、うん……片手で大丈夫だよ」


「それでしたら――でも、いったいどう、して……これは?」


「高嶺さんへのプレゼントだよ」

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