第65話 一学期終了

「え~っと……と、とりあえず、今日で一学期が終わります……。一学期終わりに、クラスの仲も? 元通りに? なったようで、先生とても嬉しいです」


(高嶺さんの堂々宣言の後、教室の外で僕と高嶺さんの会話を聞いていたのか、耳まで真っ赤にしながら蒸発していた佐藤先生が入って来た。

『み、皆さん、せ、席についてくだしゃい……』っていう、先生の言葉で僕達は全員我に返った。

 高嶺さんは、熟れたトマトみたいになって、頭から湯気を出しながら席に座った。もちろん、僕も今、席に座りながら恥ずかし過ぎて悶絶している。

 アァアァァァァァァ――!

 なんで、皆の前であんなこと言っちゃったんだ!? 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしいぃぃぃ!)


「そ、その、明日からは夏休みに入る訳ですが……く、くれぐれもはめを外さないようにしてくださいね……。こ、今回みたいな問題が起きると先生、困りますからね!

 ……って、ちゃんと聞いてくれていますか!?」


(なんで、僕はあんなことを皆の前で……緊張のせいか、冷静な考えが出来てなかった……)


「はぁ、一学期最終日だというのに九頭間くんは欠席でクラスメイト全員が揃わない。おまけに先生の話はちゃんと聞いてくれない。先生、既に泣きそうです。

 もう、終わりにしましょうか。はい、起立してください。

 ……って、どうして、こんな時だけ皆揃って一瞬で!? そ、そんなに先生の話はつまらなかったですか……?」


(ごめんなさい、先生。先生は悪くありません。でも、僕は早く高嶺さんと話の続きがしたいんです! だから、早く終わってください!)


「……それでは、良い夏休みにしてくださいね。また、二学期に元気で会いましょうね。さようなら」


「「「さようならーーー!」」」


(よっし、終わった……!

 もう、恥ずかしくて死にたくなるほど皆の前で公開告白したんだし……教室で存分に話しかけてもいいですよね!?

 ってか、友達、普通だよね!?)


「高嶺さ――っ……!」


「思井く――っ……!」


(……っ、全く同じタイミングで高嶺さんと……こんなの、もう聞かなくても分かるよ……!)


「高嶺さん……一緒に帰りませんか?」


「は、はい! 私も思井くんと帰りたくて声をかけようと思ってたんです! だから、同じ気持ちだったこと嬉しいです!」


「あの~、盛り上がっている所、大変申し訳ないなんですけど……高嶺さん、ちょっとだけ職員室に寄ってくれませんか?」


「ど、どうしてですか?」


「その、テストとか返したいものがあるのと……少し、この前の件に関してお話を聞きたくて……ですね。一応、担任ですので……」


「はぁ。分かりました……」


「露骨に嫌な顔しないでください……。それじゃ、待ってるのでお願いしますね……」


「……すいません、思井くん。せっかく、一緒に帰れたのに……呼び出されちゃいました……」


「ううん、この前は僕が呼び出されて高嶺さんが待っててくれたんだし。僕、待ってるよ」


「い、いいんですか? 遅くなるかもしれませんよ?」


「大丈夫。僕が高嶺さんと一緒に帰りたいから待ってるよ。

 あ、た、高嶺さんが鬱陶しいって思わないんだったらだけどね!」


「~~~っ、す、すぐ終わらせます! 先生が話を伸ばそうとしてきても、すぐに終わらせます! だから、待っていてください!」


「う、うん。そんなに焦らなくていいからね? 僕は、どれだけ待っても気にならないから……って、聞いてる?」


(あ、高嶺さんが意気込んでる……。

 ムフーッて、頑張ろうとする意志が見られる……。多分、僕の声聞こえてないな)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る