第63話 求友
「……思井くんの気持ちは分かりました。ですが、私はそんな謝罪聞きたくありません。もう、いいですか? もう、これ以上は……悲しませないでください」
「ごめんなさい、高嶺さん。でもね、もう少しだけ聞いて」
「嫌です……思井くんは私のことなんて好きじゃないんでしょう? だったら、もう……」
「そんなの好きに決まってるじゃないですか!」
「……っ、だって、思井くんは私のこと好きじゃないんじゃ……」
「確かに……初めは、好きでも嫌いでもない……ただのクラスメイト、だった……。けど、変わったんだ。僕の気持ちは高嶺さんに変えられた」
「どういう……」
「高嶺さんと一緒にいることで……皆が知らない高嶺さんの一面を知っていく度、僕は高嶺さんに惹かれていったんだ。高嶺さんの優しさ。高嶺さんがどう思っているか。高嶺さんと関わらないと絶対に知ることはなかった。
高嶺さんと会って話がしたい。
高嶺さんの笑顔が見たい。
高嶺さんと並んで歩きたい。
高嶺さんと一緒にいたい。
この休み中、高嶺さんと会えないことがこんなにも辛くて悲しくて苦しいんだって分かった。僕は、それだけ高嶺さんに本気で恋していたんだ!」
(うわぁ……恥ずかしい。自分で言っててなんてことを言ってんだって思うよ。
でも、これは全部僕が思ったこと。高嶺さんに対する僕の気持ちなんだ……!)
「な、なな、何を言って……そ、そんな、話し信じられません。思井くんは嘘をつきました。どうせ、今の言葉だって私を慰めるための嘘なんじゃないですか?」
「嘘じゃない! この気持ちだけは嘘なんかじゃない! 僕は、本当に高嶺さんのことが大好きです!」
「「「オォォォォ――!」」」
(なんか、クラス中から変な声が上がった……。
邪魔しないでよ。お前たちには関係ないでしょう!)
「~~~っ、し、信じません! 私は絶対にぃ――」
「僕はこの休み中、ずっと高嶺さんのことばっかり考えていたよ。会いたいのに会えないってのは本当に辛いことなんだって学んだ」
「~~~っ、そんなの、私だって……ずっと……ずっと、思井くんのことを……っ……。会いたくて会いたくて仕方がありませんでした。でも、思井くんがどう思っていたのかを一度知ってしまえばもう昔のように戻ることが出来ません……。私は、どうしたらいいんですか……?」
「……っ、高嶺さん……」
「私だって、本当に思井くんのことが好きだったんです。好きでもない人とあれほど一緒にいると思いますか? 思井くんも私のことを好きでもない奴を家にまで誘う淫らな女とでも……そう思ってるんですか?」
「思ってないよ! 僕は……僕だけが高嶺さんが普段、どんなことを思ってるか知ってる……だから、そんな風に思うわけがない! 他の誰かが、高嶺さんのことを自分の理想像に重ねて、それが違えばあーだのこーだの言っても……僕だけは本当の高嶺さんを知ってるからそんなドクズ達とは違うから!」
「ううっ、私は――そう言ってくれる思井くんのことが好きだったんです……!
でも、もう……戻ることは――」
「戻らなくていいよ、高嶺さん」
「えっ……」
「昔に……過去に戻ることなんてない。
高嶺さん、僕、随分と変わったでしょ?」
「はい……。一目で思井くんだと分かりましたけど、初めはびっくりしました……」
「これ、高嶺さんへの気持ちなんだ」
「どういう……」
「正直、僕が痩せたところで高嶺さんの何かが変わる訳じゃない……ただの、自己満足。でもね、もう昔の僕は僕自身が嫌なんだ。昔の、高嶺さんと好きでもないまま付き合っていた……他人に言われて告白した僕はもう消したいんだ」
「思井くん……」
「高嶺さん……僕はもう、二度と君を悲しませたりしない。だから、僕と……僕と……――」
「えっ……この流れって……」
「まさか、言うのか……思井のやつ」
「こんな場所で堂々と……」
「そ、そんな……思井くん……いけません。こんな、皆さんが見ている場所で……しかも、まだ私達は学生なんですよ……。プロ、ポーズなんて――」
「――僕と……僕と……」
(言え……言うんだ、僕! もう、後悔しないように……今度はちゃんと自分の気持ちを――)
「僕と……友達からやりなおしてください!」
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