第62話 謝罪
(『僕、変わろうと思うんだ。高嶺さんに謝るためには今のままの僕じゃダメなんだ。だから、僕は――ダイエットする!』)
「あれが、思井だなんて嘘だろ……?」
「う、嘘……あのカッコいい人が思井くん、なの?」
「でも、超カッコいい……!」
(この感じ、皆僕だって気づいてなかったパターン!? まぁ、どうでもいいけど……。
僕は、高嶺さんとだけ話したいんだ……!)
「失礼します。私には二度と話しかけてこないでください!」
「待って、高嶺さん!」
「話しかけないでくださいと言っています!」
「ゴメン! 僕が悪かった! 僕を嫌ってくれて構わない。だから、謝るだけ謝らせてください。返事も許しも求めません。ただ、聞くだけ聞いてください。じゃないと、僕は先へ進めません……。お願いします!」
(この頭を下げてお願いする感じ……初めて、高嶺さんと話した時に似てるな……。あの時も緊張で顔を見ることが出来なくてただ頭を下げて手を差し出すことしか出来なかったんだっけ――)
「……わ、分かりました……。でも、カバンだけ机に置かせてください。話はその後に聞きます……」
「う、うん……」
「い、いいですよ……」
(教室中が対峙する僕と高嶺さんを静かに見守って……オエェッ、この緊迫感……気持ち悪い……。
だけど、せっかく高嶺さんがチャンスをくれたんだ。これを逃せば、多分、もう……二度と高嶺さんと話す気が起きない……。
つまり、これが最後のチャンス。ちゃんと謝って僕の気持ちを伝えるんだ!)
「高嶺さん……僕は、この前、九頭間が言った通り、君に好きでもないのに告白した。僕は、フラれる覚悟だった。けど、結果は違った。高嶺さんが僕を気になると言ってくれた。あの言葉、とても嬉しかった。でも、僕は高嶺さんを好きじゃなかったんだ……」
「……っ、そんなの、聞きたくありません。やはり、話はここで終わり――」
「終わらない!」
(終わらせてたまるものか!)
「僕は高嶺さんを好きじゃないまま付き合い始めた。正直、誰かと付き合うなんて初めてで、何をすればいいのか戸惑ったよ。教室では話しかけないでって言われたし、僕はデブボッチだったから、付き合うってなっても一緒にいないものだと思ってた。
けど、高嶺さんはそんな僕に積極的に関わってくれた。一緒にお昼ご飯を食べたり、一緒に帰ったり、家に誘ってくれたり、一緒に登校したり、お見舞いに来てくれたり、看病してくれたり……。こんな、嘘をつき続ける僕なんかには本当に全部勿体なかった。
高嶺さんに嘘をつき続けるのは胸が痛くて苦しかった。全部、言えば良かった。でも、言ったら関係が壊れると思った。高嶺さんを傷つけて悲しませると思った。でも、本当は僕が高嶺さんを――感じていた幸せを失いたくなかったんだ……。
高嶺さん……高嶺さんの気持ちを知りながら、
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