第61話 変化

(つ、遂にこの日がきた……!

 いざ、教室に入ろうとすると――うぅっ……き、緊張する……!

 今日は高嶺さんに会えなかった……。

 そりゃ、そうでしょうよ……。誰が、こんな僕と一緒に登校したいって思うんだ……!

 高嶺さんは僕を避けてるんだ……。だから、勝負は教室しかない……!)


「スーハー……スーハー……」


(よし、行くぞ――)


「あの~」


「……っ!?」


「ど、ドアの前で突っ立って何か用ですか?」

「わ、私たちが伝えてきましょうか?」


(この二人は確か――この前、高嶺さんに迫ってた土居どいさんと鈴木すずきさんだ……!

 僕のことを散々罵ってたくせに、僕に声をかけてくるって……いったい、どういう心境の変化?

 気のせいなのか、二人とも妙にもじもじとさせながら赤くなってるようだし……。

 そもそも、用も何も僕もこのクラスの一員ですからね!?)


「えっ……と、ど、どうぞ?」


「「キャァアアアァァア――あ、ありがとうございますーーー!」」


(ドアを開けてあげたら、お礼を言われて行かれたけど……なんだったの!?

 ……にしても、人を見た目で判断しちゃダメだけど、結構イケイケ系の見た目派手な陽キャ女子怖い!

 やっぱり、僕には高嶺さんのような静かで清楚系な……高嶺さん、まだ来てないんだ。

 僕も自分の席へ向かおう……。


 うわっ……やっぱり、あんなことがあった直後だからか、一人でも注目が凄い……!

 ……と言っても、こんなことになったのはもちろん僕が悪いけど……お前らだって悪いんだからな!? 大っ嫌いだ!)


「……あの、そこ思井くんの席なんだけど……思井くんに何か用なの?」


(……は? 笠井さんまでなんなの!? 皆して僕を消したいの!?

 正直、他の皆からはどう思われたっていいけど……笠井さんにまで言われるのは少し傷つくよ……)


「はははは……笠井さん、僕のことを嫌ってるのは分かるけど……流石に酷くないかな……?」


「えっ、どうして、私の名前を知ってるの? 私、君とは初対面なんだけど!?」


(はぁ、やっぱり、僕がクズだったから記憶から消したんだ……。この子、悪意もなく、本当にしてそうだからもういいや……)


「……もう、いいよ、笠井さん。僕が悪かったからもう話しかけないで……。僕、ちょっとトイレに行くから……」


(消えよう……ここに、いたって居心地が悪い。個室にこもってた方がよっぽど楽そうだし。

 それに、高嶺さんだっていつ来るか分からないし……もしかしたら、来ないかもしれない……)


「じゃあね、笠井さん」


(……返事もなしか。

 ……ドアまで歩く途中も、皆に見られて気分は最悪だ。とっとと、消えて――)


「……っ、高嶺さん……」


(……っ、嘘、でしょ。僕がドアを開けようとした瞬間、高嶺さんの方が早くにドアを開けて……。

 ほら、また教室内がざわざわしてきた)


「……っ、どうして……っ……!」


「……ま、待って、高嶺さん! 逃げないで……!」


「嫌です! 離してください!」


「あ、ご、ゴメン……」


「……いえ……」


(咄嗟に腕を掴んじゃったけど……だいぶ、嫌われたな……)


「……あの、高嶺さん……話を……話を聞いてください。僕は、高嶺さんに謝りたい……!」


「嫌です! 私はもう思井くんのことなんか嫌いです! 大っっっ嫌いです!」


(大っっっ嫌い、か……。それでも、高嶺さんは僕のことを残してくれるんだね……)


「「「……えっ、えっ……ええぇぇぇ! あ、あの、痩せ細ったイケメンが……デブのお、思井ぃぃぃ!?」」」

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