第54話 違和感

「き、金曜日は楽しかったですね。改めて、誘ってくれてありがとうございます」


「僕の方こそ、ありがとう」


「珠ちゃんへのプレゼントどうでした? 喜んでくれましたか?」


「うん。家で早速使ってたよ。学校は今日からなのにね」


「ふふ、珠ちゃんは本当に思井くんのことが大好きなんですね」


「重度過ぎてちょっと困ることもあるけどね……」


「それは……とても、分かります」


(ですよねぇ)


「でも、それだけ愛してもらえてることは幸せです。多少、度が過ぎる時もありますけど……」


「うんうん」


(……それにしても――)


「どうしたんですか、思井くん。キョロキョロして……」


(気のせいかな……今日は一段と注目を浴びてる気がする。まだ、通学路だし、全然知らない人達ばかりなのに……もしかして、高嶺さんのオーラが今日は格段に強い、とかなのかな?)


「う、ううん、なんでもないよ。

 そ、それより、いよいよテスト返却日だね。僕の結果はもう分かっているけど……高嶺さんは今回どうだったの?」


「まぁ、いつも通りですかね。私がやれることはやったので、あとは結果次第です」


「高嶺さんなら大丈夫だと思うよ。ちゃんと、努力は実るよ」


「そうだと良いんですけどね。あ、そう言えば、知ってますか? 今年は文化祭らしいですよ」


「あぁ、二学期に入ったらすぐだね。去年は体育祭だったから、初めてか。どんなことをやるんだろう?」


「どうして、この学校は一年で体育祭か文化祭のどちらしかしないんでしょう? どちらもやればいいと思うんですけど」


「そうだね。やっぱり、この学校はどこか変わってる気がするよ」


「そうです。去年は体育祭だけで地獄でした……」


「あれ? でも、高嶺さんって運動神経悪くないよね?」


「良くも悪くもない平均です。でも、去年はパン食い競争なんかに当たってしまい……結局、パンを食べるのが難しくてビリだったんです……。しかも、周りは……ボ……イン……ボ……イン……でしたし……。

 お、思井くんは綱引きでしたね」


「え、どうして知ってるの!? 僕と高嶺さん、同じクラスじゃなかったよね?」


「えっ!? いや、あの、その……ひ、一クラスだけ凄く強かったクラスがあって……その、凄まじさを覚えていたというか……なんというか……」


(高嶺さんが覚えていてくれたなんて……僕、このボディで良かったです!)


「そ、それじゃ、思井くん。今日も一緒に帰りましょうね」


「うん」


(高嶺さんと話してたら、あっという間に教室の前まで着いちゃった……。ここからは、ただのデブボッチと美人なクラスメイトになる。一学期も今日をいれてあと二日。高嶺さんのためにも、何でもないクラスメイトを演じないと……!)


「……っ!」


(やっぱりだ……。ここ最近、毎日高嶺さんと一緒に教室まで来て、その度にざわざわされたてたけど……何度も同じことが続いて、それは減っていた。

 ……のに、今日はまだ続いている。クラス中から視線を浴びせられる……!

 高嶺さんは気づいていないのか……嬉しそうに席まで行っちゃったし……とりあえず、なんか不気味だけど僕も席に行こう。いくら、僕がデブボッチだからっていきなり殴れたりはしないはずだし……)


「ほら~、やっぱり~」

「え~嘘~」

「本当……本当なのか?」

「信じられねぇ……世界の終わりだ」


(なんか、声まで聞こえてくるし……世界の終わり!?

 もしかして、僕が高嶺さんと楽しく話している間にそんなニュースが……!? スマホで確認しなきゃ――ない。そんなニュースどこにもな――)


「な、なぁなぁ、思井……」


「えっ……」


(えっ……と、誰だっけ、この人達? 同じクラスでも、話さなすぎて目立たない人以外覚えてないんです。ごめんなさい!

 しかし、いきなり三人で僕に話しかけるとはどう言ったご用で?)


「何か……?」


「お前ってさ、高嶺さんと付き合ってんの!?」

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