第55話 知られた関係

「は……え、何その話?」


(なんで!? なんで、分かったの!? 誰にも見られてないはずだよね!?)


「おいおい、隠すなって~」

「そうそう。ちゃんと、証拠が載ってるんだからさ」


「証拠……?」


「ほら」


「これは――」


(僕と高嶺さん以外が参加してるクラスのラインメッセグループ……!? そんなのが存在してたのか……って、今はそんなことよりも――)


「お前と高嶺さんが二人でいるところを見た奴がいるんだよ!」


(――僕と高嶺さんのツーショット写真がグループ上で露に……これは、金曜日のやつか……? クソ、あの時、誰かいたのか……!)


「で、どうなんだよ? 付き合ってるのか!?」


(そんな血眼で訊かないでくださいよ……。

 高嶺さん、どうしましょう……って、高嶺さんも数人の女子に囲まれてる!?)


「ね~ね~、高嶺さんってあの思井くんと付き合ってるの!?」

「詳しく聞かせてよ!」

「ほらほら、前に来て」


「えっ!? えっ!?」


(高嶺さんが無理やり教室の前に……)


「そうだぜ。思井、お前も来いよ」

「ちゃんと詳しく聞かせろよ!」

「あの高嶺さんに手を出したんだ。ちゃんと話せ!」


(……っ、なんでこんなことになる……!)



「はい、それじゃ、お二人さん。この写真は本物ですか?」


(どうして、僕と高嶺さんが登校してた皆の前で記者会見みたいなのを開かされてるんだ!?

 クッ……ジロジロジロジロと気持ちが悪い……!)


「本当なのかなぁ~?」

「いやぁ、嘘でしょ?」

「だって、嘘じゃないと……ねぇ?」

「本当だったら、俺は死ぬ!」


(なんだよ……皆、ひそひそと陰口言いながら笑って……見世物じゃないんだ……!)


「あのさ、こんなことする意味ないし、もう止め――」


(グッ……皆からの同じ視線が怖い……。何を考えているかは分からない……。でも、きっとその多くが『あり得ない。冗談』みたいに感じる……)


「……そ、そうです。わ、私と思井くんはお付き合いしています!」


「高嶺さん……?」


(どうして言っちゃったんですか!? 恥ずかしいんじゃないですか!?

 僕は、嘘をついてもらって構わないんですよ? そんなことで傷つきませんから!)


「ほ、本当に付き合ってるの……?」

「じょ、冗談だよね……?」

「頼む。俺を殺さないでくれ……」


「ほ、本当です! 私と思井くんは彼氏彼女です!」


(……っ、高嶺さん……!)


「あ、あの高嶺さんからあの思井くんの手を掴んで……」

「グ……ギャァァァァアアァァ!」

「おい、大丈夫か!? 死ぬな!」


(一気に教室内が血の海に……主に男子が吐いたやつだけど……。

 女子は女子で騒いでるし……くだらない)


「高嶺さん……どうして」


「すいません、思井くん。でも、こう言えば良かったんですよね。そうすれば、もっと思井くんと……」


「いやぁ、でもさ~正直、思井でもいけたんなら俺も告白すれば良かったわ」

「だなぁ。あんなデブの思井がいけるんなら誰でもいけただろ」

「てか、高嶺さんって想像してたよりもこーいうのに興味あったんだな。いっつも、一人で誰も近寄らせないオーラ出してた癖に彼氏は欲しいとか……ヤバ、ちょっと変な気分になるわ」


(……は? お前ら、何言ってんですか……? お前ら、高嶺さんが自分の想像してた人とは違ったからって急に何を言い出して……)


「あのさ……」


「高嶺さんって意外と男見る目ないんだね。どう見たって釣り合ってないでしょ」

「分かる~。あんな、デブと付き合うとかどうかしてるよ」

「高嶺さんのビジュアルなら、どんなイケメンでも金持ちでも捕まえれるのにね」

「よりによって、思井くんなんて……私、ちょっと高嶺さんにはガッカリだよ」


(……っ、そんなの言われなくても分かってる……。僕と高嶺さんじゃ、全然釣り合ってないって……)


「い、いい加減にしてください! あなた達はどういう神経をしているんですか!?」


「な、何を怒っているの?」

「高嶺さんでも怒ることがあるんだ……」


「あなた達は思井くんの何を知っているんですか? 思井くんの優しさを……人のことを思いやってくれる優しさを知っていると言うんですか!?」


「いや……そんなの知らないよ」

「そもそも興味もねぇ」


「だったら、どうして思井くんのことをそこまで言えるんですか!? 私にはあなた達の考えが理解できません!」


「だって、ねぇ……?」

「うん……。お似合いじゃないよね」

「付き合ってる意味が分からないよね」


「じゃあ、あなた達は意味がないと付き合わないんですか? 好きって気持ちさえあればいいじゃないですか!」


「じゃ、じゃあ、高嶺さんは思井くんのことが好き、なの?」


「そうですよ。私は思井くんのことが大好きです。そして、思井くんも私のことを――」


(……っ、やめて、高嶺さん……。もう、それ以上は――)


「――好きだと言ってくれました。そして、告白してくれたんです! そんな思井くんの気持ちを――」


「それは、違うよ。高嶺さ~ん」


「……あなたは――九頭間くずまくん……」


「いやぁ、俺の名前も覚えていてくれるなんて感激だよ」


「クラス、メイトですからね……。それで、何が違うと言うんですか……?」


「思井が高嶺さんのことを好きってことだよ」


「……え?」


「だって、思井に高嶺さんに告白するように言ったの俺だからね」

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