第52話 デート終了

「……くん? 思井くん?」


「……あ、ご、ゴメン……ちょっとボーッとしてた……。何だったっけ?」


(いかんいかん……勉強であんまり寝てなかったのが今になって効いてきた……。

 いや、そうじゃないか……)


「いえ……大丈夫ですか? もしかして、また熱でもあるんじゃ……」


「ううん、熱なんて高嶺さんのおかゆパワーでぶっ飛ばしちゃったから大丈夫。当分、風邪なんてひきそうにないよ!」


「それは、大袈裟だと思いますが……。じゃあ、何か気になっていることでもあるんですか……? 私は心配です……」


「次はどこに行こうか考えてただけだよ」


「本当に、ですか?」


(うっ……高嶺さんの澄んだ瞳に見つめられると胸が痛む……。けど、これは言えない……)


「う、うん。それより、どこへ行こうか?」


「それですが、そろそろ帰りませんか?」


「えっ……」


「もう、結構な時間ですので歩くことを考えるとそろそろ出た方がいいと思います」


「あ、そ、そうだね……」


「続きはまた今度巡りましょう」


(デート終了、か……)



「思井くん。今日はありがとうございました。家にまで送ってもらって」


「ううん。僕の方こそありがとう。凄く楽しかったよ」


「私もです。誰かとお出掛けなんて、家族以外では初めてなので緊張しましたが……緊張よりも楽しい方が勝っていました。

 そ、それに……思井くんの方からで、デートに誘ってくれて、その……う、嬉しかったです……!」


「……っ、ま、また行こうね……!」


「はい、もちろんです!

 では、また月曜日に会いましょう」


「うん。バイバイ」


「さようなら」


(……高嶺さんも無事に家に入ったし、僕も帰ろう……!)


「高嶺さん、僕なんかとデートして楽しかったかな……」


(僕は間違いなく楽しくて仕方がなかった。けど、高嶺さんに全てを話していればもっと楽しかったに違いない……!

 いや、全てを話していれば高嶺さんとこうやって話すことも、一緒に歩くことも、出掛けることも……高嶺さんと一緒にいることがどれだけ幸せなのかも知ることはなかった)


「……っ、ゴメンね、高嶺さん……」


(僕は君の涙を見たくない……。

 僕は君を離したくない……。

 僕なんかがおこがましいけど……僕は君のために……そして、僕の幸せを手放さないために君に嘘をつき続けるよ……)

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