第50話 デート中~再開~
「お、思井くん……手、大丈夫なんですか……?」
「うん。全然、痛くなかったよ。あの人達、ただの見かけ倒しだったんじゃないかな」
「そ、そんな……ちゃんと見せてください!」
「本当に大丈夫だよ?」
「ジィー……ホッ、本当に大丈夫ですね……。
お、思井くんって意外と強いんですか?」
「まぁ、昔にちょっとね……」
「か、寡黙ですね……。
で、でも……か、カッコ良かった……です! 助けてくれてありがとうございます!」
「……っ、高嶺さん……!」
(高嶺さんが僕の手を握って……これだけで、勇気を出したかいがあったってもんですよ!)
「カッコ良かったぞ~兄ちゃーん!」
「二人ともお幸せにね~!」
「「はっ!」」
(わ、忘れてた……全然知らない人達に見られてるんだった。よく分からない賛辞もとんでくるし、拍手まで送られてくる……。は、恥ずかしぃぃぃ!
高嶺さんも赤くなりながらアワアワしてるし――高嶺さんの手に失礼して――)
「た、高嶺さんいこう!」
「は、はい!」
(ハァハァ……こ、ここまで来れば大丈夫かな……?)
「高嶺さん、ゴメンねいきなり走り出して……大丈夫だった?」
「は、はい……」
(高嶺さん……赤くなってるし、やっぱり、ちょっと急ぎすぎたかな……。僕も今までにこんなに速く走ったことなんてなかったから息があがる……)
「あ、あの思井くん……て、手……」
「手……」
(あ、あぁああぁぁあ――っ!
わ、忘れてた……僕、高嶺さんと手を繋いだままだったんだ! うわっ、僕の手汗でびっしょりだし、気持ち悪い!)
「ご、ゴメン……今、離すね!」
「あ……」
(ふぅ……こ、これで、良いよね……。高嶺さんの手を僕なんかの汗で汚してしまったことが一生の不覚!)
「高嶺さん、クレープ大丈夫かな? その、結構ドタバタしちゃったけど」
「……はい、もう食べ終わるくらいにまでは減っていたので大丈夫ですよ」
(あれ、なんか高嶺さんガッカリしてる? 顔は笑ってるけど、なんだか落ち込んでいるような……気のせい?)
「思井くん。次はどこへ行きましょうか?」
「えっ……う、う~ん、そうだな……」
(しまった……考える暇なんてないままここに来ちゃったからどうしよう……。というか、ここどこ?
何か、目ぼしいお店は――)
「あ、あそこなんてどうですか?」
「あそこは――小物屋ですね」
「うん。小物でも見て回ろうかと――」
(ただ、目に入ったから提案しただけだけど……)
「いいですね。あそこへ行きましょう。あ、クレープ食べてしまうのでちょっとお待ちください。ハム……ハム……ハムハム……ハムハムハム……」
「そ、そんなに急がなくても大丈夫だよ?」
「うわぁ~色々とあるんですね~。ネックレス、ノート、ブックカバー、指輪……どれも、可愛いです」
「そうだね」
(適当に選んだわりには良い選択だったかな。高嶺さん、喜んでるみたいだし。にしても、僕もここは初めて入るけど……本当に小物が沢山だ)
「あ、これ。珠に買ってってやろうかな。鉛筆、何本か短くなったって言ってたし」
「珠ちゃんへですか?」
「うん」
「へぇ~、花柄キャラクターが描かれている鉛筆ですか。良いですね。珠ちゃん、喜ぶと思います」
「あ、高嶺さんも何か欲しい物があれば言ってね」
「どうしてですか?」
「いや、その……テスト対策プリントを届けてくれたお礼にと思ってプレゼントさせてほしいんだ」
「い、いいですよ、そんな。私がやりたくてやっただけの勝手な行動なんですから」
「ううん。その、お見舞いの時のおかゆの材料とかにもお金がかかっちゃったと思うし――」
「そ、それも、私の自己満足ですから」
「それに……せっかく、高嶺さんがあそこまでしてくれたのに、結局赤点ギリギリ回避くらいの点数しかとれなくて申し訳ないのお詫びにというか……な、何か贈らせてください!」
「……そ、それでしたら、次のテスト期間には一緒に勉強するというのはいかがですか?」
「え……」
「わ、私に思井くんの勉強を見させていただく……そ、それを、私への贈り物にしてください」
「いや、でも……それじゃあ、何も……」
「わ、私は物より時間が良いです。物だって十分素晴らしいです。けど、思井くんと一緒にいられる時間が欲しい、です……」
(……そ、そんなこと言うなんて反則です、高嶺さん! 僕は……僕はぁぁぁ! 何も言い返せないに決まってるじゃないですか!)
「……っ、わ、分かりました……! じゃあ、その時はぜひ、よろしくお願いします……!」
「は、はい……」
「は~い、そこの真っ赤なバカップルお二人さ~ん。買うもの決まったなら早く済ませてくれないかな? こっちも商売なんでね。店の中でそんなアマ~い空気出されたら他の客が入って来ないからねーーー!」
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