第41話 母への説明

「一通り見回してみたけど、ベランダには萌えキャラのシャツ。お風呂にはまだ微妙に水滴が残っていて、台所は見間違えるほど綺麗になってる――説明してくれる?」


「はい……」


(……うう、なんで僕は実の母に正座させられてるんだ? 別に悪いことはしてないのに……)


「僕のか、彼女の高嶺さんが多分、やっていってくれたんだと思います……」


「嘘はつかないで。あなたにそんな気のきいた彼女がいるわけないでしょ。珠まで騙して……妄想を膨らませるのもいい加減にしなさい!」


「ち、違うよ、お母さん。信じられないと思うけど、僕は本当に付き合ってるんだ。高嶺さんと」


「だいたい、誰なのよ。その、高嶺さんって子は――」


「……学年で一番綺麗で美しいって言われてる人。因みに、同じクラス……」


「はい、嘘ね。あなたがそんな子と付き合えるなんて、実の母が言うのもなんだけどあり得ないわ」


(ホントにね!? 僕の家族、僕に対して酷い!)


「う、嘘じゃないよ。ほら、見て。このプリントだって高嶺さんが届けてくれたんだから!」


「あら、日付が今日になってる……。あなたに、プリントを届けてくれる友達なんていないと思ってたのに……やっと……やっと、友達が出来たのね……良かった! グスッ……」


「だから、友達じゃなくて彼女なんだってば!」


「……お母さん、信じられないと思うけど、現実なんだよ……。私だって、信じらなかったよ。でもね、家にまでお見舞い来てくれてね、お兄ちゃんの看病しながらねイチャイチャしてたんだよ……本当にお兄ちゃんには彼女がいるんだよ……」


(た、珠……お前、良い奴だなぁ……! お兄ちゃん、感動したぞ!)


「イチャイチャ?」


「うん。あ~ん、してた。あと、お兄ちゃんの目、なんか変態ぽかった」


「立衣! 妹の前でよくもまぁそんなこと……珠はまだ小五なのよ? 悪い影響が出たらどうするの!?」


(前言撤回だ。珠はやっぱり、悪い奴だ!)


「でも、それを言うなら珠だってなかなか酷かったよ。僕の彼女に対して、いきなりお風呂に入ってって言って、入らせたんだよ」


「珠ぁ~?」


「で、でもでも、それは、お兄ちゃんを守りたかっただけなんだもん!」


「それに、珠は高嶺さんにわざと大きい服と小さい服を渡して着替えさせたんだ。僕がドキドキしちゃってもしょうがないと思わない?」


「あ、酷い、お兄ちゃん。私、言ったよね。ちゃんと考えた結果、あの服装になったって。それなのに!」


「じゃあ、僕のジャージでも渡せばよかったでしょ? なのに、あえてあんなサイズが大きめな萌えキャラのシャツだなんて……高嶺さんの色々と見てはいけないとこが見えそうで危なかったんだよ!」


「あ~もう、二人ともうるさい! 少し黙りなさい!」


「「……はい」」


「はぁ……とにかく、立衣に彼女がいるのは本当なのね?」


「……うん」


「そう……じゃあ、いずれちゃんと紹介してちょうだい。どうやら、その子に迷惑かけたことは間違いなさそうだし、謝らないと。あと、私も見てみたいし」


「分かったよ」


「にしても、立衣に彼女がねぇ~」


「お母さん、ニヤニヤし過ぎだよ……」


「でも、その子良い子なのね。お見舞いに看病、珠の相手……それに、掃除まで……完璧少女か!」


「実際に、高嶺お姉さんはすごく良い人だったよ。だから、私認定してあげたの! お兄ちゃんの彼女だってことを」


「う~ん、珠になんの権限があってそんなこと言ってるかお母さんちょっと分からないけど……そうなのね!」


「うん。それにね、お兄ちゃんとっても好かれてるみたいだった」


「へぇ~、立衣はその子に何をしてあげたのかな~?」


「べ、別に……」


「あらあらあらま~、恥ずかしがって。いつから付き合ってるの?」


「せ、先週から」


「嘘! まだ、一週間しか経ってないのにもう彼氏の家に来たの。最近の子って大胆ね~。もう、大人の階段も登ってるのかしら? お母さん、なんだか悲しいわ~」


「の、登ってないわぁぁぁ!」


「そう。じゃあ、ま、色々と大切にしなさい。ちゃんと、愛して大事にして……幸せになりなさい」


「……うん、分かってる……」


(……そんなことは――)

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