第39話 彼女認定
「あ、ありがとう、高嶺さん。とっても美味しかった……」
「い、いえ。そう言ってもらえると、私も嬉しいです。妹さんはどうでしたか? 満足してくれましたか?」
「はいはい、美味しかったですよ……ありがとうございました!」
「あの、妹さんブスッとしてますけど、どうしたんでしょう? 味、気に入らなかったんでしょうか……」
「さぁ……。でも、高嶺さんが気にすることないよ。僕は、本当に美味しいと思ったか……ら……」
「そ、そうですか……。って、思井くんどうしたんですか!? ガクガクと……」
「いや、ゴメン。満腹になって眠たくなってきちゃった……」
「あ、それじゃ、私は洗い物を済ませておいとましますね。思井くんは寝ていてください」
「うん、ゴメン、ね……。今日は、本当にありがとう……。嬉しかった、よ……スースー」
「……もう、お眠りになられたんですね……思井くんの寝ている姿――ゴク……」
「……お姉さん、何してるんですか? 手を変な動きにさせて……怪しいですよ?」
「べ、別に、寝ている思井くんが可愛いとか思ってませんから! 寝ている無防備な思井くんに今なら気づかれずに触れる……とか、思ってませんから!」
「……はぁ、全部口に出てますよ。にしても、こんな大きな声を聞いても起きないなんて、お兄ちゃんは今本当に幸せなんだと思いますよ」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。まぁ、だから、好きに触ればいいじゃないですか? お姉さん、お兄ちゃんの彼女なんでしょ? まぁ、私は寝てるお兄ちゃんが可愛いなんて思ったことはないですけど」
「~~~っ、お、思井くんは可愛いですよ……!
……思井くんの手――大きいです……」
「恥ずかしがりながら結局触れるんですね……。お姉さん、大胆なのかそうじゃないのか分かりませんよ」
「わ、私はへ、変態じゃないですよ。こ、こうやって、触れたいって思うのは思井くんだけなんですから!」
「はいはい、分かりましたよ」
「本当に、ですか?」
「……っ、その聞き方ずるいのでやめてもらっていいですか? か、可愛いと思ってしまうので……」
「はぁ……」
「無自覚ですか……ウザいです」
(……んん、これはなんの夢なんだろう? 右手が暖かい……? 何かに包まれているような……少し、暖か過ぎるような気がするけど、包まれているのが嬉しくて……離したくないような……)
「あ、お、思井くんが握り返してくれました」
「はいはい、良かったですね。表情、崩れてますよ」
「あ、あの、撫でてみてもいいですか?」
「まぁ、いいんじゃないですか?」
「ふふふふ……誰かをこうして撫でるのなんて初めてです……」
「嬉しそうで何よりです」
「い、妹さん。思井くんに渡すプリント、ここに置いておくので伝えてください」
「はーい。洗い物まで、ありがとうございました。お兄ちゃん、結局起きないので私が見送りにいきますよ。仕方なくですからね」
「あ、ありがとうございます。あの、服とかは――」
「私が洗いますよ。その、なんだか迷惑かけたみたいですし……」
「い、いえ、そんな……私は、妹さんと関われて楽しかったですよ」
「はいはい、制服にはどんな菌がついてるか分からないのでとっとと出てってください」
「お、押さないでください」
「はい、靴を履いて、玄関を出て。はい、さような――」
「――あの!」
「まだ、何か?」
「私も妹だから、妹さんの気持ち分かります。大好きなお兄ちゃんが他人にとられるのは嫌、ですよね……。でも、私は妹さんとも仲良くしたいと思っています!」
「な、なにを……――。
……はぁ、そんな真剣な眼差しで見つめられても困るんですけど……。珠です!」
「えっ……」
「だから、私の名前、珠ですって。仲良くしたいなら、妹さん……じゃなくて、名前で呼んでくださいよ。先ずは、そこからでしょう?」
「た、珠ちゃん!」
「だ、抱きつかないでください。私は、お兄ちゃんが好き。……だけど、お姉さんも良い人だって分かったから……認めたくないけど、お兄ちゃんの彼女だって認定します!」
「あ、ありがとうございます!」
「く、苦しいですって……力、強めないでください……!
いいですか? お兄ちゃんを悲しませたら許しませんからね! た、高嶺……お姉さん!」
「か、可愛い、です。私、思井くんを悲しませないと約束します。だ、だから、もう少しだけこのままで――」
「……はぁ、まったく……お兄ちゃん、よくこんな綺麗な人を彼女に出来たよ……。こんな、綺麗で可愛い人、ライバルがいっぱいいるに決まってるよ……。
はぁ、お兄ちゃん大丈夫かな……」
(高嶺さんと珠が仲良く手を繋いで歩いてる……良かった、夢の中だけでも仲良くなってくれて……――)
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