第37話 破壊力強すぎ彼女
「それより、珠。高嶺さんに迷惑かけてないだろうな?」
「アハハ、仲良く話してたよ?」
「本当だろうな?」
「うん。それで、お兄ちゃんはお姉さんのどこに惚れたの? おっぱいは残念だけど、めちゃくちゃ綺麗だから?」
「まだ、言うか……。だから、だな――」
「……あの、妹さん……」
「……っ!」
(あ、危ない……もう、ちょっとで高嶺さんに聞かれるところだった……)
「お姉さん……もう、出てきたんですか? 随分と早かったですけど、ちゃんと洗いました?」
「あ、洗いました……それで、その……」
「はぁ、せっかくお兄ちゃんとの時間なのに……。まぁ、いいや。じゃあ、入ることを許可します。さぁ、私とお話の続きをしましょうか」
「は、はい……」
(……どうしたんだろ、高嶺さん。ドアの向こうから顔を覗かせてるだけでこっちに来ない……。見た感じ、モゾモゾしてるし……)
「……っ、た、高嶺さん!?」
「う……み、見ないでください、思井くん……」
(……は、僕今一瞬死んでた気がする。
だって、高嶺さんの格好が……高嶺さんの格好が……あまりにも……可笑しい!)
「た、高嶺さん……その格好は――」
「い、妹さんが用意してくれて……」
「珠!」
「ヒッ……に、睨まないでよ。お兄ちゃんだって嬉しいでしょ? どうせ、持ってたって着ない萌えキャラが描かれたTシャツを彼女が着てくれたんだから。それに、悔しいほど似合ってるし。私に感謝するべきなんじゃない?」
(……確かに、くじの景品で当たった萌えキャラが描かれたTシャツなんて一生着たりなんかしない。それに、高嶺さんの姿は――超絶可愛い。
普通、萌えキャラTシャツなんて誰が着ても似合わないじゃん! なのに、高嶺さんには似合ってるってどういう原理なの!?)
「ほら、お兄ちゃんだって見惚れて言葉も出てない。私にありがとうは?」
「……あのな、威張ってるところ悪いけど……珠」
「何?」
「僕の部屋に勝手に入ったってことだよな?」
「うん!」
「決めた。珠とはしばらく口聞かない」
「えー、なんで!?」
「自分の胸に聞いてみなさい」
「……ん~、分かんない!」
「……反省しなさい。
高嶺さん、ゴメンね。珠が迷惑ばっかりかけて……あ、珠のことは放っておいていいから座ってね」
「い、いえ……じゃあ、失礼します」
(……っ、高嶺さんが僕の隣に……! 高嶺さんから、僕が使ってるシャンプーの香りが届いてきて、心臓が――。
それに、なんだか、見ちゃいけないものを見てるような気分で――)
「あの、思井くん……そっぽを向いてどうしたんですか?」
「……いや、その……目のやり場に少し困るというか……」
「……ちゃ、ちゃんと、履いてます! ただ、このシャツが大きくて――」
(……っ、高嶺さんがシャツを引っ張って……。
シャツがブカブカだから高嶺さんのむ、胸が見えそうに……。それに、そのせいでちゃんと履いてるって分かるけど、下が見えないせいで、どうしても履いてないんじゃないかって――)
「……って、履いてるって……高嶺さん、なにを――」
「そ、そんなこと聞かないでください!」
「ご、ごめんなさい!」
「ぅぅぅ、い、妹さんのズボンです……でも、少し小さくて――」
「珠!」
「ふ、ふんだ。流石に、お兄ちゃんのズボンを履いてもらう訳にはいかないでしょ。でも、私の服だと、身長的に合わないからお兄ちゃんの服を着てもらったんだよ!」
(……っ、ま、まぁ、そういう考えがあったってことだけは頭にいれておこう……。
でも、今の高嶺さんは僕にとって破壊力が強すぎる! 見えそうになるボディ……。でも、何よりも刺激が強すぎなのは――いつも、タイツで隠されていた高嶺さんの絶対領域が今は何にも隠されず素足が露になっているということ……。直視できない……!)
「ご、ゴメン、高嶺さん。僕もう我慢できない!」
「え、そ、そんな……妹さんもいる前でなんて――あの、思井くん?」
「ゴメン、高嶺さん。僕、ちょっと限界だから閉じ籠らせて!」
(布団をかぶって、その中に隠れれば高嶺さんを見ないで済む……。本当はもっと見てたいけど……これ以上、身体を熱くさせたら余計に悪化する……)
「……え、は、はい……。それじゃ、台所だけ貸してください。私、おかゆ作りたいですから」
「うん! 好きに使って! 分からないことは珠に聞いてくれていいから!」
「わ、分かりました……」
「むぅぅぅ~、なんで、この二人付き合ってるの……? 変だよ……! 私は絶対認めないんだからーーー!」
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