第36話 大より小派なの?
(ひ、一先ず、疲れたからまた横になってるけど……いきなり、何が起こってるの!? 今、高嶺さんの姿はここにない。ここにあるのは、高嶺さんのカバンと買ってきてくれた材料だけ。高嶺さんは今――珠とお風呂場にいる!
……って、ホントになんなの!?)
「高嶺さん……僕は、高嶺さんの気持ちだけで風邪が吹き飛びそうなほど嬉しかったのに……こんな状況になって、ますます悪化したよ」
(まぁ、全ての原因は珠だけど……)
「……って、二人の声がここまで聞こえてくる……。いったい、何を話しているんだ?」
『はい、どうぞ。これ、着てもらう服とタオルです。シャンプーとかは見れば分かると思うのでちゃんと綺麗になってくださいよ』
『は、はい。ありがとうございます……。あの、見られていると脱ぎづらいんですけど……』
『お姉さん……本当にお兄ちゃんの彼氏なんですか? お姉さんみたいな綺麗な人があんなお兄ちゃんの彼氏だなんて未だに信じられないんですけど』
『ほ、本当です』
『はぁ、お姉さん見る目ないですね。正直、お姉さんみたいな綺麗な人なんて……男の人、とっかえひっかえ出来るでしょう? なのに、あのお兄ちゃんなんて……デブでボッチでオタクで良いところなんてひとつもありませんよ? ま、まぁ、私は妹ですし? そんな、お兄ちゃんの良いところも知ってますけどね。ふふん!』
『わ、私だって、思井くんの良いところくらい知っています!』
『へぇ~、例えば?』
『へっ!?』
『例えば、お兄ちゃんの良いところはどこなんですか?』
『そ、それは、ですね……や、優しいところとか……人の気持ちを考えられるところとか……あと、誰かを真っ直ぐに助けてあげられるところ、とか……です……』
『カァァァァ――って、照れて……お姉さん彼氏の良い部分言うだけでそんなになっちゃうんですか?
『ち、違います! 初、なんかじゃ……ありません……!』
『ま、なんだって良いですよ。続きはお風呂を出てからにしましょうか』
「……う~ん、声は聞こえるけど……内容までは聞き取れない……」
(珠のやつ……高嶺さんに迷惑かけてないといいけど……)
「お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃ~ん」
「うわっ! た、珠、重いから身体に乗らないでくれ」
「むぅー、重いとか女の子に言わないで!
それより、なんなのあの人? 私しか知らないお兄ちゃんの良いところ普通に答えちゃうんだよ? 何なの!?」
(いったい、高嶺さんと何を話してたんだ……。それで、高嶺さんはなんて言ってくれたんだろう……大層気になります!)
「だ、だから、言っただろ。高嶺さんは僕の彼女なんだって」
「うぅぅ、本当にお姉さんがお兄ちゃんの女なの? お兄ちゃんの女は私だけじゃないの?」
「意味が分からんぞ……」
「でも、そうだよね……。女の人と話すと緊張しちゃうお兄ちゃんがあんなにも楽しそうにしてるんだもんね……彼女じゃないと無理だよね……。お兄ちゃん、お姉さんに何か弱味でも握られてないの? 私が助けてあげるよ?」
「いい加減にしろよ、珠。僕が高嶺さんに告白して返事をもらったんだ」
(まぁ、今も高嶺さんと話す時は緊張してるけど……別の意味で)
「ふ~ん、じゃあ、お兄ちゃんはお姉さんのどこが好きになったの? おっぱい、とっても小さかったよ? お兄ちゃん、おっぱいは大きい方が好きなんでしょ?」
「ゲフ、ゴフ! な、なにを……」
「だって、お姉さんのおっぱいよりお兄ちゃんのおっぱいの方が見た感じ大きいよ? それに、お兄ちゃん、おっぱいの大きい女の人の画像待ち受けにしてるじゃん。でも、お姉さんのおっぱい小さかったよ? お兄ちゃん、大きいのより小さい派になっちゃったの?」
「ばっ、や、そんな話ヤメロォォォ! た、高嶺さんをおっぱいで好きになったんじゃない!」
「でも、お兄ちゃんはおっぱい大きい女の人の方が好きじゃないの? 小さい人が彼女でいいの?」
(確かに、高嶺さんと付き合うまでは僕はきょ、巨乳派、だった……けど――)
「あのな、珠。お兄ちゃんは気づいたんだ。胸が小さいことを気にしてる……その行為がめちゃんこ可愛いってことに!」
(そう! 自分の胸を気にして、牛乳を飲んでる……って、恥ずかしながら話してくれた高嶺さんが悶えるほど可愛かったんだ!)
「……お兄ちゃん、意気込んでるけど――流石に、ちょっとひくよ……うわぁ……」
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