第28話 初めての共同作業
(……さっきから、カチカチカチっていう、ホッチキスでプリントを止める音しかしてない……。教室には僕と高嶺さん、笠井さんしかいないし……何この状況!? 気まずい!
高嶺さんは何も言わないで手伝ってくれてるけど……黙々と作業する高嶺さんも綺麗だ……!)
「思井くん、手止まってるよ? 高嶺さんに見惚れるのも分かるけど、動かさないといつまでも終わらないよ」
「な、なななにを……そんなことないですよ!」
「アハハ、赤くなって焦ってる~図星だったんだ。ま、ホッチキスでプリント止めるだけの作業なのに高嶺さんがやると華が咲くもんね」
(そうなんですよ! よくわかってらっしゃる!
……って、言えたらいいんだけど言えるわけないし……と言うか、そんなこと言ってたら高嶺さんが恥ずかしがって――あれ? 赤くなっていない、だと……?)
「いやぁ、全然表情崩さないし流石高嶺さんだね。いったい、どう育てばそんなに綺麗になるんだろう?」
(ど、どうなってるんだ? 高嶺さん、黙々と作業を続けたままで――)
「二人とも、口じゃなくて手を動かしてくださいね。いつまでも終わりませんから」
「ゴメンね~高嶺さん。手伝ってもらってるのに~。でもね、プリントの量、予想以上に多くて同じ作業ばっかでつまらなくなったんだもん。どうせなら、楽しくやりたいよ」
「確かに、プリント多いですよね。なんで、この学校はテスト対策のプリントを纏めて生徒に配ったりするんでしょう?」
「出来るだけ皆が赤点を取らないようにじゃない? 実際、私もこのプリントの問題を解いてるおかげでいつもギリギリ回避できてるし」
「……僕もです。これと、授業最終日に言われるテストに出る問題の答えを覚えてようやくです」
「それに比べて高嶺さんは凄いね~。毎回、良い点取ってて羨ましいよ」
「いえ、ただの勉強した結果ですよ」
「勉強する行為をしてることが凄いんだよ! ね、思井くん」
「えっ、え~まぁ……」
(高嶺さん、本当は嫌なんだよな……。一瞬、高嶺さんがチラッてこっち見た気がするし――)
「……いや、僕だってやる気さえあれば勉強しますよ? それに、勉強したら高嶺さんくらいの点数取れると思いますね。だから、別に凄いとは思いません」
(……で、合ってますか?
あ、合ってるかどうかは分からないけど……高嶺さん、ちょっと笑った気がする……)
「アハハハ~そんなこと言ってどうせ勉強しないくせに~」
「痛、痛いですよ、笠井さん。叩かないでください!」
「二人とも! ふざけてないで手を動かしてください!」
「「ご、ごめんなさい……」」
「まったく……初めての共同作業なんですから……」
「え、共同作業? 共同作業ってどういうこと?」
「……っ、ま、間違えました! 忘れてください!」
「いや、でも共同作業って……」
「笠井さん……忘れてください、ね?」
(つ、冷たい! 高嶺さんの表情が今までにないほど冷たい!)
「は、はい……」
「ありがとうございます」
「ね、ねぇ、思井くん……。絶対、高嶺さん共同作業って言ったよね……?」
「……………」
「なんで、答えてくれないの!?」
(ごめんなさい、笠井さん。でも、それは僕も気になってますので……そして、多分、後で高嶺さん盛大に恥ずかしがると思うので……ここは、無視させてください……!)
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